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AEDとはどんな医療機器かを簡単に解説!使い方と救命処置の基本

健康2025.10.09

この記事について

街中や学校、駅などで「AED」と書かれた赤い箱を見かけたことはありませんか?
AEDは「自動体外式除細動器」という医療機器で、心臓が突然止まってしまった人の命を救うために使われる重要な装置です。

以前は医師や救急隊員しか使えませんでしたが、2004年以降は一般の人でも使用できるようになり、多くの場所に設置されています。

今回は、AEDがどのような医療機器か、どのようなときに使うのか、そして基本的な使い方について、わかりやすく解説します。
いざというときに大切な人の命を救えるよう、AEDの基礎知識を身につけておきましょう。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 保健医療学部 臨床工学科

講師渡邉 翔太郎Watanabe Shotaro人間医工学 情報学フロンティア

私は臨床工学技士の視点から、AI技術を活用した医療安全システムの研究を行っています。

医療現場では人と人によるダブルチェックが安全を支えていますが、業務の複雑化や人手不足により、より効率的で確実な仕組みが求められています。
そこでこの研究では、人とシステムによる新たなチェック体制を実現し、医療事故の未然防止とコスト削減を両立する仕組みを構築しています。

具体的には、医療機器や周辺資材の状態を機械学習や画像認識で自動判別し、従来は目視や手作業に依存していた確認作業を支援するシステムを開発しています。
これにより、人的エラーを減らし、安全で効率的な医療環境の提供に寄与していきたいと考えています。

研究室では、こうした技術を実装するためのAIモデルの開発と検証を進め、臨床現場に即した実用性の高いシステムを目指しています。
臨床工学技士が培う工学的知識と医療現場の理解を結びつけることで、未来の医療をより安全で持続可能なものにすることを目標としています。

「AED」を簡単に解説!

AEDとは「Automated External Defibrillator」の略で、日本語では「自動体外式除細動器」と呼ばれる医療機器です。
心臓のけいれんによって血液を送り出せなくなる心室細動に対し、電気の刺激を与えて心臓の正常なリズムを取り戻す装置です。

AEDは音声で操作手順を教えてくれるため、医学の知識がなくても安全に使うことができます。
また、心臓の電気的活動を自動で測定・分析し、電気刺激が本当に必要な場合にだけ作動するよう安全に設計されています。

現在では、空港や駅、学校、スポーツ施設、公共施設、会社など、多くの人が利用する場所に広く設置されています。

心室細動とは

心室細動とは、心臓の筋肉がバラバラにけいれんして、血液を体に送るポンプの役割を失ってしまう、とても危険な状態です。

健康な心臓は、決まったリズムで縮んだりゆるんだりして血液を流しています。
しかし、心室細動になると心臓がブルブルと不規則に震え、血液を送り出せなくなります。
この症状は命に関わる重い不整脈の一つで、自然に治ることはほとんどありません。

心室細動を治すために効果的なのが、AEDなどの除細動器を使った電気による治療です。
電気の刺激で混乱している心臓のリズムを整え、また規則正しく動かすことができます。

救命は早めの処置が重要

心停止が起きたときは、すぐに行動することが命を救うカギに。
もし処置をしなければ、心停止から1分ごとに助かる可能性が7~10%ずつ下がり、10分を超えると救命はほとんど難しくなります。

しかし、AEDを使った電気による治療と胸骨圧迫を組み合わせてすぐに対応すれば、1分あたりの生存率の下がり方を4%程度に抑えることができます。
そのため、10分経っても約60%の人が助かる可能性があるのです。

日本では救急車が現場に到着するまで平均で約10分かかるため、救急隊を待つだけでは十分ではありません。
素早くAEDを使うことが、多くの命を救う重要なポイントになるのです。

AEDを使った一次救命処置の方法

AEDを使って倒れた人を救命しようとする様子

心停止の人を見つけたときの対応手順を、段階ごとにわかりやすく説明します。
一次救命処置(BLS)は、誰でも行える処置で、正しく実施することで助かる可能性を大きく高めることができます。

1. 意識の確認

まず、倒れている人の肩を軽く叩きながら、「大丈夫ですか?」と大きな声で呼びかけて意識を確認します。
反応がない場合や、呼吸が正常でない場合は心停止の可能性があります。

2. 119番通報とAEDの要請

意識がないことを確認したら、すぐに119番通報を行いましょう。
周りに人がいる場合は「あなたは119番をお願いします」「あなたはAEDを持ってきてください」と具体的に役割を分けるとスムーズです。

一人の場合は、まず119番通報を行い、近くにAEDがある場合は取りに行きます。

3. 胸骨圧迫(心臓マッサージ)

AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫を行います。

胸の中央部分、胸骨の下半分に手のひらの付け根を置き、もう一方の手を重ねてください。
肘をまっすぐに伸ばして体重をかけ、1分間に100~120回のリズムで、小学生〜成人の場合は少なくとも胸が5cm沈むように押し込みます。

押した後は胸が完全に元の位置に戻るようにしましょう。

4. AEDの使用

AEDが到着したら電源を入れ、倒れている人の胸の服をはだけて胸を出します。
電極パッドを音声ガイダンスや図に従い、右上と左下の素肌に貼りましょう。

「離れてください」と音声が流れたら、倒れている人に誰も触れていないことを確認します。
AEDが電気ショックを必要と判断した場合、「ショックボタンを押してください」と指示されるので、再度誰も触れていないことを確認してからボタンを押します。

電気ショック後はAEDの指示に従って胸骨圧迫を再開し、救急隊が到着するまで心肺蘇生とAEDの操作を約2分ごとに繰り返してください。

AEDを使用する際の注意点

AEDは、状況に応じた注意点を知っておくとより効果的に使用できます。

胸が濡れている場合

倒れている人の胸が雨や汗で濡れていると、電気が水を伝わってしまい、AEDの効果が十分に発揮されないことがあります。
乾いたタオルや布で胸をしっかり拭いてから電極パッドを貼りましょう。

湿布や貼り薬がある場合

パッドを貼る場所に湿布や貼り薬がある場合は、必ずはがしてから貼ります。
薬剤が残っていると、電気ショックの効果が下がったり、やけどの原因になったりすることがあります。

医療器具が埋め込まれている場合

心臓ペースメーカーや除細動器が胸に埋め込まれている場合、硬い出っ張りが見えることがあります。
その場合は、出っ張りから8cm以上離してパッドを貼りましょう。

体毛が多い場合

体毛が多いとパッドが肌に密着せず、AEDの効果が下がったり、やけどの原因になったりします。
できるだけ肌にしっかり密着させるか、予備のパッドがあれば、最初のパッドで体毛ごと剥がしてから新しいパッドを貼り直す方法もあります。

電気ショックが不要と指示された場合

AEDが「電気ショックは不要です」と言っても、心臓が回復したわけではありません。
倒れている人に反応がない場合は、AEDの指示に従って胸骨圧迫を続けてください。

パッドは救急隊が到着するまで貼ったままにし、電源も切らないようにしましょう。


AEDをはじめ、人工呼吸器や透析装置、心臓カテーテル検査・治療に使う機器など、医療現場には命を守るための高度な医療機器が数多く存在します。

これらを安全に管理・操作し、トラブルがあればすぐに対応する「医療機器のスペシャリスト」が 臨床工学技士です。

臨床工学技士は、医師や看護師などと連携しながら、医療機器の専門知識を活かしてチーム医療を支える重要な役割を担っています。
もし「医療に関わりたいけれど、工学や機械にも興味がある!」という方がいたら、臨床工学技士はピッタリの仕事かもしれません。

さらに、臨床工学技士の活躍の場は病院だけでなく、医療機器を扱う企業など幅広いというのも魅力の一つです。
医療の道を目指す人はもちろん、進路に迷っている人は「臨床工学技士の仕事内容をご紹介!魅力ややりがい、資格の取得方法も」もぜひ読んでみてくださいね。
命を救う最前線で活躍する臨床工学技士の世界、ぜひ知っていただければ嬉しいです。

AEDとは簡単に使える救命機器!いち早い救命活動が大切

AEDは、心室細動などの命に関わる不整脈の人に電気ショックを与え、心臓のリズムを正常に戻す医療機器です。
2004年から一般の人でも使えるようになり、現在では多くの公共施設に設置されています。

心停止から時間が経つごとに救命率は下がるため、救急車の到着を待つだけでなく、現場にいる人がAEDを使ってすぐに対応することが命を救うカギとなります。

AEDは音声で操作手順を案内し、心電図を自動で解析して必要な処置を判断するため、専門知識がなくても安全に使用できます。
ただし、胸が濡れている場合や貼り薬がある場合など、特別な状況での対応を知っておくと、より命を救える可能性が高まります。

皆さんも、いつ誰かの命を救う場面に遭遇するかわかりません。
AEDの基本を身につけ、いざというときに勇気を持って行動できるよう、心の準備をしておきましょう。

北海道科学大学保健医療学部臨床工学科で医療機器のスペシャリストを目指しませんか?

北海道科学大学保健医療学部臨床工学科では、AEDをはじめとするさまざまな医療機器について、原理から操作、管理まで総合的に学習することができます。

実際の医療現場で活用されている最新機器を使用した、実践的な教育プログラムも提供。
豊富な経験を持つ教員陣が、臨床現場で活躍できる臨床工学技士の養成に力を注いでいます。

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卒業後は医療現場で臨床工学技士として働くほか、大学院への進学、医療機器を開発・製造・販売を行うメーカー(企業)で知識を生かして働いている人もいます。

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