結核とは?「咳が止まらない…」は要注意!知っておきたい結核の症状・感染経路・予防法



この記事について
みなさんは「結核(けっかく)」という病気をご存じでしょうか。
かつて「国民病」とも呼ばれた感染症であり、一昔前の病気と思われがちですが、実は今も日本で年間およそ1万人の方が新たに診断されています。
結核は早期に発見し、きちんと薬で治療を続ければ治る病気です。
この記事では、結核の原因や症状、感染のしくみ、治療法や予防法について、一般の方にも理解しやすい形でお伝えします。
北海道科学大学の教育・研究の現場から、健康と医療の大切さをお伝えできれば幸いです。
このコラムは、私が書きました!
教授古谷 大輔Furuya Daisuke病態検査学 感染制御学 臨床微生物学 遺伝子検査学
市内大学病院の検査部で臨床検査技師として20年以上の臨床経験があります。
認定臨床微生物検査技師(CMTCM)、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)、およびInfection Control Doctor(ICD)の認定資格を保有しており、市内の病院で医療従事者を対象に、結核、インフルエンザウイルスやノロウイルスについて院内感染対策講習会の講師を毎年務めています。
主な研究テーマは、「自然界におけるウイルスの挙動と実態把握」です。
下水中のウイルス濃度をリアルタイムPCR法で解析することで、下水疫学調査の有用性を評価しています。
これまで、ノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス、アストロウイルスやエンテロウイルスを対象に調査しており、現在は新型コロナウイルスを解析しています。
目次
結核とは?今も身近にある感染症
結核は、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)という細菌によって起こる感染症です。
世界では毎年約1,000万人が新たに感染し、約150万人が命を落としています。
特にHIV(エイズ)感染者にとって、結核は最も重要な日和見感染症の一つです。
免疫力が低下している人では発病リスクが高く、HIVと結核の合併(コインフェクション:co-infection)は、世界的にも重要な公衆衛生上の課題です。
日本では栄養状態の改善や医療の発展により大幅に減少し、2021年にWHOから「結核低蔓延国」と認定されました。
それでも依然として年間約1万人が発病しており、特に高齢者や免疫力の低下した方では注意が必要です。
結核の原因
結核は、結核菌という細菌が原因の感染症です。
この菌は非常に小さく目に見えませんが、体内で増えるとさまざまな症状を引き起こします。
健康な人が結核菌に感染しても、すぐに発病するわけではありません。
多くの場合、体の免疫が菌の増殖を抑え込むため、症状は現れません。
しかし、感染した人のおよそ5〜10%は、一生のうちに発病するといわれています。
結核の主な症状
初期症状は「かぜ」に似ており、気づかれにくいのが特徴です。
次のような代表的な症状が2週間以上続く場合は、注意が必要です。
- 痰(たん)が絡むような咳
- 微熱
- 体がだるい(倦怠感)
進行すると、血が混じった痰や吐血が出ることもあります。
このような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
肺以外にも発病する「全身の結核」
結核の約8割は肺に発病しますが、菌が血液やリンパを通じて全身に広がることもあります。
代表的なものに次のようなタイプがあります。
- 首が腫れる「リンパ節結核」
- 背骨にできる「脊椎カリエス」
- 腎臓に感染する「腎結核」
最も危険なのは、菌が全身に広がる粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)や、脳を包む膜に感染する結核性髄膜炎です。
命に関わる場合もあるため、早期発見と治療がとても重要です。
結核の感染経路は?
結核は、患者の咳やくしゃみによって菌を含む飛沫が空気中に放出され、それを吸い込むことで感染します(空気感染)。
ただし、吸い込んだからといって必ず発病するわけではありません。
免疫がしっかり働いていれば、体が菌を排除してくれます。
食器や衣類を介して感染することはありません。
結核の治療法
現在の医学では、結核は薬で治せる病気です。
治療の基本は「薬を6~9か月ほど毎日飲み続けること」です。
- 最初の2か月:4種類の薬剤を併用
- 残りの期間:2~3種類を継続
症状が良くなっても、内服を中断すると、MDR-TB(多剤耐性結核)やXDR-TB(超多剤耐性結核)と呼ばれる多剤耐性結核菌が発生したり、治療が長期化するおそれがあります。
医師や医療スタッフと相談しながら、処方された薬を毎日欠かさず服用し続けることが、治療成功の鍵です。
そのため、患者さんが確実に薬を服用できるよう、医療機関(医師・看護師など)、保健所(保健師)、および調剤薬局(薬剤師)が連携し、服薬管理をサポートする体制が整えられています。
入院が必要な場合もある
痰に多くの菌が含まれていると、他人にうつす危険があるため、感染症指定医療機関での入院が必要です。
入院期間は平均しておよそ2か月です。
菌が検出されなくなれば退院し、その後は通院で治療を続けます。
結核を予防するためにできること

結核は、予防することができます。
感染や発病を防ぐ方法をご紹介します。
1.免疫力を高める生活習慣
- 規則正しい生活
- 栄養バランスの取れた食事
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- 禁煙
免疫力を高めておくことで、感染しても発病しにくくなります。
免疫のしくみや高め方については、別のコラムでも詳しく紹介しています。
免疫とは?仕組みや種類、高める方法をわかりやすく解説!
2.BCGワクチンの接種
BCGは、弱めたウシ型結核菌を用いたワクチンで、乳幼児の重症化(髄膜炎や粟粒結核など)を防ぐことを目的としています。
日本では、生後1歳までの乳児への接種が推奨されており、10〜15年程度の予防効果が期待されています。
3.健康診断で早期発見
年に1回の胸部エックス線検査(レントゲン)で、症状が出る前に結核を発見できる場合があります。
咳や微熱が長引く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
4.マスクの着用と咳エチケット
結核は空気感染によって広がりますが、患者本人がサージカルマスク(いわゆる不織布マスク)を着用することで、周囲への感染を大幅に減らすことができます。
一方で、周囲の人が感染を防ぐ目的でマスクを着ける場合は、医療現場などではより高性能なN95マスクの着用が推奨されています。
また、咳やくしゃみをする際は、マスクやティッシュで口と鼻を覆う「咳エチケット」を心がけましょう。
潜在性結核感染症とは?
潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection;LTBI)とは、結核菌に感染していても、まだ発病していない状態を指します。
診断には、インターフェロンγ遊離試験(IGRA:Interferon Gamma Release Assay)と呼ばれる血液検査が使われます。
主な方法にはT-SPOTやクオンティフェロン(QFT)などがあり、感染の有無を正確に調べることができます。
最近では、日本の結核患者のうち外国出生の人の割合が増加しており、感染率の高い国で感染した後に発病するケースも報告されています。
そのため、外国出生者へのLTBI検査や治療は、結核を減らすうえでとても大切です。
結核は今も身近な感染症。正しい知識で予防と早期発見を!
- 結核は今も日本で年間約1万人が発症
- 痰が絡む咳、微熱、倦怠感など「かぜ」に似た症状が特徴
- 空気感染で広がるが、薬で治療ができる
- 規則正しい生活と早期発見が、健康を守る第一歩
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北海道科学大学・保健医療学部 臨床工学科では、結核をはじめとするさまざまな感染症について体系的に学ぶことができます。
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結核の現状や潜在性結核感染症(LTBI)など、社会的にも重要なテーマをわかりやすく解説します。
北海道科学大学 保健医療学部 臨床工学科は、臨床現場で即戦力として活躍できる臨床工学技士の育成に力を注いでいます。
経験豊富な教員陣の指導のもと、実際の医療現場で使用されている最新医療機器を活用した、実践的な教育プログラムを展開しています。
現役学生の臨床工学技士国家試験合格率は、13年連続で全国平均を上回る水準で、2024年度(2025年3月卒業)は100%を達成しました。
卒業後は、医療機関で臨床工学技士として働くほか、医療機器メーカーなどで専門知識を生かして幅広く活躍しています。
北海道科学大学は、これからも地域と医療をつなぐ人材育成に取り組み、正しい知識と実践力を備えた臨床工学技士の育成を通じて、社会に貢献し続けます。











