ホップとはどんな植物?ビールに使われる理由も



この記事について
みなさんは「ホップ」という植物をご存じでしょうか。
ビールの原料として名前は聞いたことがあるかもしれませんが、具体的にどのような植物なのかは意外と知られていません。
ビールにおいては、苦味と香りを与えるだけでなく、品質を保つためのさまざまな働きも持つ重要な存在でもあります。
今回は、ホップの正体についてわかりやすくお伝えします!
このコラムは、私が監修しました!
教授山下 浩Yamashita Hiroshi天然資源系薬学
植物って面白い!
甘い成分、辛い成分、ビタミンやアミノ酸などのほか、薬になる成分を含有している植物もあれば、熊を倒してしまうような強い毒、人間の心臓を止めてしまうような毒をもつ植物など、植物によって様々な個性があります。
また、毒になるのか薬になるのか作用も全く判っていない植物がまだ星の数ほど存在しているって、知っていました?!
化学の発達した現代においても、植物から得られる天然由来化合物の研究は新しい医薬品を創るため重要な鍵となっています。
化学的・薬理的性質の知られていない化合物が数多く存在するため、将来的な医療の発展に繋がると信じて日々低分子有機化合物の探索研究をしています。
目次
ホップとは?
ホップは、古くから世界中で栽培されてきた植物です。
ここでは、ホップがどのような植物なのか、どこで育てられているのか、そしてビールに使われるようになった歴史について見ていきましょう。
ホップはどんな植物?
ホップとは、アサ科カラハナソウ属のつる性多年草です。
和名では「セイヨウカラハナソウ」とも呼ばれています。
ホップは他の植物などに巻きつきながら成長し、収穫期の8月から9月には5~10メートルほどの高さにまで伸びます。
非常に成長が早いのが特徴です。
ビールのCMなどでよく「ホップ」を聞くと思いますが、ビールづくりに使われるのは、雌株にできる「毬花(まりはな)」という部分です。
毬花は松ぼっくりのような形をしていて、小さな葉が何枚も重なったかわいらしい見た目をしています。
毬花の中には「ルプリン」と呼ばれる黄色い小さな粒があります。
このルプリンには、ビールに欠かせない苦味成分や香り成分がたっぷりと含まれています。
ホップの産地
ホップの栽培に適しているのは、冷涼で乾燥した気候の地域です。
世界的には、ドイツやチェコ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどが主な産地として知られています。
特にドイツ南部のハラタウ地方、チェコ北西部のザーツ地方は、古くからの産地として有名です。
日本でも明治時代の初期から北海道でホップの栽培が始まっています。
また、野生のホップが日本で初めて発見されたのは、北海道の岩内町であることも追記しておきます。
現在、国内では北海道をはじめ、岩手県、青森県、秋田県、山形県といった冷涼な気候の地域が主要な産地です。
実は、北海道科学大学の敷地にある薬用植物園でも、ホップが栽培されています!
ホップの歴史
ホップといえばビールですが、ホップがビールづくりに本格的に使われるようになったのは、14世紀から16世紀頃といわれています。
5,000年以上といわれるビールの歴史からみると、比較的最近の出来事といえるでしょう。
ホップが使用される以前のビールには、苦味や香りをつけるために「グルート」と呼ばれる、さまざまなハーブや香辛料を配合したものが使われていました。
しかし、ホップに優れた防腐効果があることが注目され、次第に主流となっていきます。
実際に、ホップを使ったビールのほうが味わいも良く、保存性にも優れていることが分かってきたのです。
1516年にドイツで制定された「ビール純粋令」では、「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」と定められました。
この法律によってホップは、ビールづくりに欠かせない原料としての地位を確立したのです。
現在は主にビールの原料として使われていますが、料理への活用など、ビール以外の可能性についても探求されています。
ビールにおけるホップの役割もチェック!

ホップが使われる代表的なものとして挙げられるビール。
実は、ホップはビールにおいて、さまざまな働きを持っています。
ここでは、ホップが果たす4つの主な役割について詳しく見ていきましょう。
①苦味
ビールには特有の爽快な苦味がありますが、これがホップによって生み出されています。
ホップの毬花に含まれるルプリンには「アルファ酸」という成分が含まれています。
アルファ酸は、ビールの製造工程で麦汁(ばくじゅう)を煮沸する際に熱を加えることで「イソアルファ酸」という物質に変化します。
イソアルファ酸こそが、ビールに爽快な苦味を与える正体。
この苦味は、麦芽の甘みとバランスを取り、ビールの味わいを引き締める大切な役割を果たしています。
なお、苦味の強さは、使用するホップの種類や量、煮沸する時間によって調整できます。
②香り
ホップは、ビールに豊かで多彩な香りをもたらします。
ルプリンに含まれる精油成分には、ミルセンやフムレンといった香り成分が含まれています。
これらの成分が、ビール独特の爽快な「ホップ香」を生み出すのです。
ホップの種類によって香りは大きく異なり、柑橘系のフルーツのような香り、花のような華やかな香り、スパイスのような香り、青草のような爽やかな香りなど、実にさまざまです。
ちなみに、ビールの香りは「ホップ香」「エステル香(酵母由来)」「モルト香(麦芽由来)」の3つが組み合わさってできています。
香り成分は熱に弱いため、煮沸の終盤や発酵後にホップを加える「ドライホッピング」という手法を使うことで、より強い香りを引き出すことが可能です。
③泡持ち
ビールを注いだときにできるクリーミーな泡も、ホップのおかげで安定します。
イソアルファ酸は、麦芽由来のタンパク質と結びつく性質があります。
この結びつきによって泡の強度が増し、きめ細かく持続性のある泡ができあがるのです。
泡はビールの風味を保ち、炭酸ガスが逃げるのを防ぐ役割もあります。
④殺菌効果
ホップには、腐敗を防ぐ殺菌作用があります。
冷蔵技術や殺菌技術が発達する前の時代には、この効果が特に重要視されていました。
有名な例が「IPA(インディア・ペールエール)」というビアスタイルです。
18世紀末、イギリスから当時植民地だったインドへビールを船で運ぶ際、長い航海に耐えられるよう、防腐効果の高いホップを大量に使用したことが始まりだといわれています。
現在では保存技術が発達していますが、ホップの殺菌効果はビールの品質を長期間保つために今も役立っているのです。
ホップの種類
ホップには200種類以上の品種があるといわれ、それぞれが異なる香りや苦味の特徴を持っています。
ここでは、代表的なホップの種類について見ていきましょう。
ビターホップ
ビターホップは、ビールに強い苦味を与えることを主な目的としたホップです。
代表的な品種に「マグナム」があります。
マグナムは1980年にドイツで開発された品種で、香りを邪魔しないクリーンで美しい苦味が特徴です。
IPAなどの苦味が際立つビアスタイルによく使用されています。
アロマホップ
アロマホップは、ビールに豊かな香りを与えることを主な目的としたホップです。
代表的な品種には「カスケード」や「シトラ」があります。
カスケードは1972年にアメリカで開発された品種で、グレープフルーツのような柑橘系の爽やかな香りと、フローラルな華やかさが特徴です。
アメリカンクラフトビールの立役者ともいわれ、世界中のビール愛好家を魅了してきました。
シトラは、グレープフルーツやライムのような柑橘系の香りと、パッションフルーツやベリーのようなフルーティーな香りが特徴。
さまざまなホップを交配して生まれた複雑で魅力的な香りを持っています。
ファインアロマホップ
ファインアロマホップは、他のホップに比べて香りや苦味が穏やかで、上品な味わいをもたらすホップです。
代表的な品種には「ザーツ」があります。
ザーツはチェコ原産で、穏やかで気品のある香りとクリーンな苦味が特徴です。
ドイツ原産の「テトナング」は、上品な香りとマイルドな苦味をビールに与えます。
ファインアロマホップは、伝統的なヨーロッパスタイルのビールによく使用されており、繊細でバランスの取れた味わいを生み出します。
デュアルパーパスホップ
デュアルパーパスホップは、苦味と香りの両方の魅力をバランスよく持つホップです。
代表的な品種に「モザイク」があります。
モザイクは2012年にアメリカでリリースされた比較的新しい品種ですが、パッションフルーツのようなトロピカルフルーツの香りと、適度な苦味を持っています。
複雑で奥深い香りと使いやすさから、世界中のビールづくりで人気を集めている品種です。
ホップは家でも育てられる?
実は、ホップは家庭でも育てることができます。
つる性植物なので、支柱やネット、フェンスなどに這わせて楽しむことができます。
多年草なので植え替えいらずで、毎年8月から9月に松ぼっくりのような可愛らしい毬花を収穫できますよ!
植え付けの適期は3月から4月頃で、株分けした苗を土に植えつけます。
庭などに直植えできる環境があれば理想ですが、プランター栽培も可能です。
ただし、ホップは1年間で根を縦にも横にも大きく広げる植物です。
プランターで育てる場合は、土の容量が40リットル以上入る深めのものを選び、東向きや南東向きの日当たりが良い場所に置くことが大切です。
つるが伸びてきたら、支柱やネットに誘引しましょう。
水やりは、植え付け直後はこまめに行い、その後は土が乾いたタイミングでOK。
水はけの良い場所を好むため、水のやりすぎには注意してあげましょう。
冬になるとつるは枯れますが、根は生きています。
春にまた元気な芽を出してくれます。
ホップとはビールに欠かせない植物!栽培も楽しんでみよう
ホップは、アサ科のつる性植物で、主にビールの原料として使われています。
ホップの毬花に含まれるルプリンには、苦味成分のアルファ酸や香り成分の精油が含まれており、ビールの味わいを決定づけます。
またホップは、苦味や香りだけでなく、泡持ちを良くし、殺菌効果を高めるなど、ビールにおいてさまざまな役割を果たしています。
世界には200種類以上のホップがあり、どの品種をどのように使うかによって、ビールの個性は大きく変わります。
古くから人類に愛されてきたホップは、まさに「ビールの魂」といえる存在なのです。
ホップは、家で育てることもできます!
ホップについて気になってきたら、ぜひご自宅での栽培にもチャレンジしてみてくださいね!
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この薬用植物園では今回ご紹介したホップをはじめ、さまざまな薬用植物が栽培されています。
栽培された植物は教員の研究材料としても活用され、新たな医療や薬学の発展に貢献しているのです。
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