マクロファージとは?特徴や働きを簡単に解説!



この記事について
私たちの体には、外敵から身を守り、傷ついたところを修復するための仕組みがあります。
その中心的な役割を果たしているのが、マクロファージという免疫細胞です。
マクロファージは、体内に侵入した細菌やウイルスを食べて退治する「体の掃除屋」とも呼ばれています。
今回は、マクロファージの発見からその能力、私たちの健康を守る仕組みについて、わかりやすく解説していきます。
このコラムは、私が監修しました!
教授三浦 哲嗣Miura Tetsuji循環器内科学 薬理学
私は医学研究者であった叔父の影響を受けて医学部に入り、卒業後は循環器内科医と研究者を兼ねる仕事を続けてきました。心臓は「筋肉でできた単なる血液を送るポンプ」と思われがちですが、人体のさまざまな臓器が必要とする血液の量は、その時の人の活動の種類と程度で大きく変わります。心臓と血管には「それぞれの臓器がその時に必要としているだけの血液を送る」ことを可能とする驚くほど精密な仕組みがあります。その仕組みが障害されている代表的な疾患である心不全をテーマに、海外の研究者とも協力しながら研究してきました。心不全の研究はこの30年間に進歩を続けてきましたが、心不全はまだ「完治」できない病気です。
学生諸君には、講義を通して循環器疾患の病態と薬物治療とのつながりを理解し、若い世代に期待されている研究課題についても知って欲しいと思っています。
目次
マクロファージとは?発見の歴史や特徴を簡単にご紹介!
マクロファージについて知る前に、その発見の歴史から見ていきましょう。
マクロファージの発見
マクロファージの発見は、1892年。
ロシア(現ウクライナ)の微生物学者イリヤ・メチニコフが、動き回ってものを食べる細胞を発見したのが研究の始まりです。
彼はこの細胞を「マクロファージ」と名付けました。
メチニコフは、このマクロファージの発見が大きな功績として認められ、1908年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
大型の免疫細胞としての特徴
マクロファージの名前の由来は、「マクロ」の「大きい」、「ファージ」の「食べる」という意味から。
つまり、「大食い細胞」です。
マクロファージは、直径20μm前後の比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しています。
白血球の一種で、血液中の約5%〜10%を占める単球から分化します。
アメーバのように動きながら、体内をパトロールしています。
体内での主な役割
マクロファージの主な役割は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を食べて退治することです。
それに加え、死んでしまった細胞や、体内で発生した異常な細胞も食べてくれます。
また、マクロファージは自然免疫の一部として働いています。
自然免疫とは、生まれつき持っている防御機構のことで、外敵が侵入してきたら、すぐに対応できるよう常に準備をしています。
マクロファージの3つの重要な役割
マクロファージは、体を守るためにいくつもの重要な仕事をこなしています。
その中でも特に重要な3つの役割を見ていきましょう。
①パトロール:体内を巡回
マクロファージは、体のあらゆる場所に存在しています。
血液中を流れたり、各臓器に常駐したりしながら、常に体内を見張っています。
例えば、肺にいるマクロファージは肺胞マクロファージ、肝臓にいるマクロファージの一種はクッパー細胞と呼ばれます。
それぞれの場所で、異物が侵入していないかチェックしているのです。
②捕食:異物を発見し排除
マクロファージの最も重要な役割が、この「捕食」です。
マクロファージは 、体内に侵入した細菌やウイルスを見つけると、すぐに食べてしまいます。
この働きを「食作用」や「貪食」と呼びます。
マクロファージは、細胞の表面にさまざまな「受容体」を持っています。
これらの受容体が、細菌やウイルスなどの異物を認識し、認識された異物は、マクロファージの中に取り込まれて分解されます。
マクロファージは、病原体だけでなく、体内で寿命を迎えた細胞や、がん細胞のような異常な細胞も食べてくれます。
このようにマクロファージは体をクリーンな正常の状態に保つために重要な働きをしているのです。
③情報伝達:免疫システムの連携
マクロファージの3つ目の重要な役割が「情報伝達」です。
異物を食べたマクロファージは、その情報を他の免疫細胞に伝えます。
これを「抗原提示」と呼びます。
マクロファージは、食べた異物を細かく分解し、その一部を自分の細胞表面に「提示」。
すると、T細胞と呼ばれる別の免疫細胞がその情報を受け取り、さらに強力な免疫反応を引き起こします。
また、マクロファージは「サイトカイン」と呼ばれる物質を放出し、他の免疫細胞を呼び寄せたり、活性化したりする働きも。
これにより、体全体で協力し異物と戦う態勢が整えます。
マクロファージの活性化と健康への影響

マクロファージは、普段はおとなしく体内をパトロールしていたり、常駐している場所では監視をしていますが、いざという時には強力な戦士に変わります。
これを「活性化」と呼びます。
活性化したマクロファージは、私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか?
通常時と活性化時の違い
通常時のマクロファージは、体内を巡回しながら異物がないかチェックしていますが、異物が侵入するとすぐに活性化します。
活性化したマクロファージは、通常時よりもさらに活発に動き回り、より多くの異物を捕食します。
また、他の免疫細胞を呼び寄せるサイトカインを多く放出するようになります。
マクロファージが活性化すると、次のような流れで体の防御システムが段階的に強化されていきます。
- 炎症反応の開始
- 血管の拡張
- 異物の排除能力向上
- 抗体産生の促進
まず、活性化したマクロファージは炎症を引き起こすサイトカインを放出し、感染部位に他の免疫細胞を呼び寄せます。
次に、一酸化窒素を出して血管を拡張させ、免疫細胞が体中をすみやかに巡れるようにします。
そして、マクロファージ自身の異物捕食能力も大幅に向上します。
最後に、マクロファージが放出するサイトカインが「B細胞」という白血球の一種を刺激し、抗体の産生を促し、効果的に異物の排除ができるようになるのです。
炎症を起こして異物を排除するタイプのマクロファージ(M1マクロファージ)とは別のタイプに活性化されたマクロファージ(M2マクロファージ)もあり、炎症の終息や細胞の再生、修復に関わっています。
このように、マクロファージの活性化は、私たちの健康を守る上で欠かせない働きといえます。
感染症やがんとの戦い
マクロファージの活性化は、感染症やがんと戦う上で重要な役割を果たします。
感染症との戦いでは、細菌やウイルスを直接食べて退治するだけでなく、他の免疫細胞を呼び寄せて総力戦を展開します。
がん細胞との戦いでは、活性化したマクロファージは、がん細胞を直接攻撃したり、NK細胞というがん細胞を殺す細胞を活性化したりします。
ただし、マクロファージの働きが過剰になると、逆に体に悪影響を及ぼすこともあります。
例えば、慢性的な炎症を引き起こしたり、自己免疫疾患(体の免疫システムが自分の細胞や組織を攻撃してしまう状態)の原因になったりすることもあります。
マクロファージとは私たちの健康を守る免疫細胞!
マクロファージは、私たちの体を守る重要な免疫細胞です。
体内をパトロールし、異物を見つけて排除し、他の免疫細胞に情報を伝えるなど、さまざまな働きを担っています。
しかし、マクロファージは単独で働いているわけではありません。
他の免疫細胞と連携しながら、私たちの健康を支えています。
私たちの体には、このように健康を支える優れたシステムが備わっています。
マクロファージの働きを知ることで、自分の体の中で起きていることについて、より身近に感じることができるのではないでしょうか?
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