脳卒中とは?原因や症状、治療法などをわかりやすく解説



この記事について
脳卒中は誰にでも起こる可能性があり、日本人の死因の第4位を占める重大な病気です。
後遺症が残ることもありますが、早期発見と適切な治療により、後遺症を最小限に抑えることも可能です。
今回は、脳卒中の種類や症状、治療法などをわかりやすく解説します。
脳卒中を疑う症状が現れたらすぐに受診できるよう、ぜひ知っておいてください。
このコラムは、私が監修しました!
教授三浦 哲嗣Miura Tetsuji循環器内科学 薬理学
私は医学研究者であった叔父の影響を受けて医学部に入り、卒業後は循環器内科医と研究者を兼ねる仕事を続けてきました。心臓は「筋肉でできた単なる血液を送るポンプ」と思われがちですが、人体のさまざまな臓器が必要とする血液の量は、その時の人の活動の種類と程度で大きく変わります。心臓と血管には「それぞれの臓器がその時に必要としているだけの血液を送る」ことを可能とする驚くほど精密な仕組みがあります。その仕組みが障害されている代表的な疾患である心不全をテーマに、海外の研究者とも協力しながら研究してきました。心不全の研究はこの30年間に進歩を続けてきましたが、心不全はまだ「完治」できない病気です。
学生諸君には、講義を通して循環器疾患の病態と薬物治療とのつながりを理解し、若い世代に期待されている研究課題についても知って欲しいと思っています。
目次
脳卒中とは?わかりやすく解説!
脳卒中をわかりやすくお伝えすると、脳の血管が「詰まる」または「破れる」ことで、脳への血液の供給が滞り、脳の機能が低下してしまう病気です。
脳の機能低下により、手足の麻痺や言語障害、意識障害などの症状が現れ、重症の場合は命の危険もあります。
脳卒中には血管の状況別に「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類があります。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まり、脳細胞に十分な血液が届かなくなることで起こります。
脳卒中の中で最も多いのが脳梗塞です。
血流が途絶えた脳細胞は数時間程度で死んでしまい、もとには戻らないため、早期発見・早期治療が重要です。
脳梗塞の前触れ「一過性脳虚血発作」
一過性脳虚血発作は、脳の血管が詰まって一時的に脳梗塞の症状が現れたものの、血流が改善して24時間以内に症状が消失したものです。
脳梗塞ではありませんが、脳梗塞の前触れとして注意が必要な状態です。
脳出血
脳出血は、脳内の血管が破れ、出血して起こるものです。
脳内出血とも呼ばれます。
脳梗塞と比べて後遺症が残りやすく、死亡率も高いです。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳動脈瘤(脳の血管にできた瘤)が破裂し、脳の表面を覆う「くも膜」という薄い膜の内側に出血します。
突然の激しい頭痛(「バットで頭をなぐられたような」と表現する患者さんもいます)と意識障害が特徴的で、脳卒中の中でも特に重症度が高い病気です。
発症した患者の約1/3が死亡、1/3に重い後遺症が残り、社会復帰できるのは1/3とされています。
脳卒中が起こる原因

脳卒中は、生活習慣と深い関連のある「危険因子」が積み重なって起こることが多い病気です。
「危険因子」には高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、慢性腎臓病などがあります。
これらが心臓や全身の血管に負担をかけ、最終的に脳の血管にダメージをきたしてしまうのです。
脳梗塞と脳出血の原因として多いのは、動脈硬化や高血圧です。
動脈硬化により血管が細くなり詰まったり、高血圧で血管に負担がかかり出血したりしてしまいます。
また、不整脈(特に心房細動という不整脈)により心臓の中に血栓ができ、それが血流とともに運ばれて脳血管に詰まってしまうケースもあります。
くも膜下出血は、脳動脈瘤(脳の血管にできたこぶ)の破裂が直接の原因です。
この動脈瘤は、高血圧や喫煙、糖尿病などの生活習慣や老化などを原因として発生するといわれています。
脳卒中の症状
脳卒中が起こると、運動機能障害や言語機能障害など、ダメージを受けた脳の部位によってさまざまな症状が発生します。
公益社団法人日本脳卒中協会では、脳卒中の典型的な症状として、以下の5つの症状を提示しています。
- 片方の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる(手足のみ、顔のみの場合もあります)
- ロレツが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
- 力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする
- 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
- 経験したことのない激しい頭痛がする
※引用:公益社団法人日本脳卒中協会 脳卒中の主な症状より
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数同時に現れることもあります。
しかし、共通するのは「突然発症する」ということです。
重症の場合、意識を失うこともあります。
FASTで脳卒中をチェック
脳卒中の症状をより簡潔にチェックする「FAST」という標語があります。
これは「Face Arm Speech Time」を略したものです。
脳卒中を疑ったら、FASTにしたがって症状をチェックしてみましょう。
■Face:顔の麻痺がないか
上手く表情が作れない、顔の片側が下がる、歪む、動かないということがないかチェックします。
■Arm:腕の麻痺がないか
肘を伸ばして両腕を前にあげたままキープできるか、片腕に力が入らないなどはないかチェックします。
■Speech:言葉の障害がないか
短文がいつも通り話せるか、言葉が出てこない、ロレツが回らないなどがないかチェックします。
■Time:発症時刻を確認してすぐに119番
脳卒中の治療は早ければ早いほど、後遺症の可能性を減らせます。
以上の症状のうち1つでも当てはまるものがあれば、すぐに119番に連絡し医療機関を受診しましょう。
脳卒中の検査方法と治療
脳卒中が起こった場合の主な検査方法と代表的な治療をご紹介します。
脳卒中の主な検査方法
以下のような検査で脳血管の状態を確認し、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの診断を行います。
- 頭部CT:脳の出血の有無や場所を確認
- 頭部MRI:脳梗塞や出血の有無、状態を確認
- 頭部MRA:脳血管の状態や動脈瘤の状態を確認
- 頸動脈エコー:首の血管の状態を確認
- 心エコー:心臓内の血栓の有無を確認
そのほか、問診、血液検査、心電図、胸部レントゲンなどを行います。
脳卒中の治療
脳卒中の主な治療は、投薬治療と手術などの外科的治療の2種類があります。
血管を詰まらせている血液の固まりを溶かしたり、その固まりが大きくならないようにする薬、脳を保護する薬、脳の腫れを抑える薬、止血剤などを投与し、急性期の脳梗塞や脳出血、くも膜下出血による脳のダメージに対処します。
また、脳梗塞発症からすぐであれば、カテーテル治療(血管に入れる管を使った治療)で脳血管内の詰まりを取り除く治療なども有効なケースがあります。
くも膜下出血では動脈瘤の再破裂を防ぐ手術も行われます。
そのほか、血圧、体温、脈拍などの全身状態の管理、危険因子やその背景となり得る生活習慣改善、機能改善のリハビリなどを行いながら、回復と社会復帰を目指していきます。
脳卒中の症状を理解して早期発見・早期治療につなげよう
脳卒中は、脳の血管が「詰まる」または「破れる」ことで発症する病気です。
脳への血流が滞ることで半身の麻痺や言語障害などの症状が現れ、重症の場合、後遺症や命の危険にもつながります。
血管の詰まりによる「脳梗塞」、血管の破裂による「脳出血」、動脈瘤の破裂によりくも膜下で出血する「くも膜下出血」の3種類があり、原因として高血圧や動脈硬化が関係していることが多いです。
脳卒中は発症してからの迅速な対応が治療の鍵です。
早期発見、早期治療で、後遺症の可能性を減らし、回復と社会復帰を目指すことができます。
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