雪道のでこぼこ「そろばん道路」はなぜできる?



この記事について
冬の北海道では、道路に雪が積もるだけでなく、表面が波打つようにでこぼこになることがあります。
この状態は「そろばん道路」と呼ばれ、雪国で暮らす人々を長年悩ませてきました。
「どうして雪道はあんなにでこぼこになるの?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、そろばん道路の特徴や発生する仕組み、注意したい危険性について、科学的な視点からわかりやすく解説します!
このコラムは、私が監修しました!
教授蟹江 俊仁Kanie Shunji
私の研究分野は、構造工学と寒地環境工学です。
構造物の安全性・信頼性を評価するとともに、経済的で環境にやさしい構造形式を考えることが研究のテーマです。
また、近年の地球温暖化は、構造物にこれまでにない異変をもたらすこともあり、北海道のみならず、温暖化の影響が出やすいとされている極寒冷地での環境問題も取り扱っています。
「そろばん道路」は通行する車両や歩行者の安全性に注目が集まりがちですが、橋梁の上などにできると、振動によって大きな負担が構造物にかかることになります。
私が大学院時代に行った研究は、雪氷による凹凸が橋梁構造に与える負担の大きさを数値解析的手法で求めるものでした。
どうすればその発生を防ぎ、安全性が確保できるのか。
現在は「そろばん道路」の発生メカニズムの解明を通じて、人々と構造物、双方の安全性確保を目指した研究を進めています。
目次
雪道のでこぼこ「そろばん道路」とは
北海道の冬道に慣れている人でも、「そろばん道路」という名前は意外と知らないかもしれません。
そろばん道路とは、踏み固められた圧雪路の表面に、そろばんの玉のようなコブ状の凹凸が連なった道路のことです。
古くは舗装されていない砂利道に自然にできる凹凸のことを呼んでいましたが、砂利道が少なくなった現在は、北海道をはじめとした雪国で知られるようになった呼び名です。
欧米では、「洗濯板道路」(Washboard Road)などとも呼ばれています。
そろばん道路は、交通量の多い道路の交差点付近、特に停止線側で発生しやすく、冬の間はできたり消えたりを繰り返します。
また、周囲の雪が解けた後も氷の凹凸だけが残りやすく、春先まで影響が続くこともあります。
そろばん道路の厄介な点は、事故の危険性が高まることです。
でこぼこの路面を車で走行すると車体が大きく揺れ、ハンドルを取られやすくなります。
場合によっては車のコントロールを失い、重大な事故につながる危険もあるため、冬道では特に注意が必要です。
なお、雪解け後には道路にボコボコと穴が空く場合があります。
詳しくは下記コラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
雪解け後に道路がボコボコになる原因や補修方法を解説
雪道のでこぼこ「そろばん道路」はなぜできる?

実は、そろばん道路ができる詳しい仕組みは、現在も完全には解明されていません。
複数の研究機関が原因解明に取り組んでいますが、現時点でも「まだわかっていない部分が多い」とされています。
なぜなら、その形成原因は力学的な問題だけではなく、コブを形づくる材料自体が、温度と圧力の条件次第で雪の結晶・氷・水へと姿を変えるためで、より複雑な「熱化学と力学の融合現象」と考えられるからです。
冬になると当たり前のように見かける現象でありながら、今なお研究が続けられている、雪国特有の科学的な謎なのです。
そろばん道路の有力な発生原因
現在、そろばん道路が発生する原因として有力とされているのは、タイヤが路面に与える圧力変化と車両排熱による路面温度の変化が関係しているとする説です。
車が発進・停止を繰り返す場所では、タイヤからの圧力変化と車両排熱による温度変化が同時に発生します。
この両者の作用によって、雪や氷が少しずつ変形し、コブ状のでこぼこが形成されると考えられています。
そろばん道路が発生しやすい条件・場所
研究や定点観測により、そろばん道路が発生しやすい条件や場所も徐々に明らかになってきています。
まず、そろばん道路が形成されるのに必要な材料、つまり雪がしっかり降った後であることが大事です。
雪が降っている最中には形成されません。
そして気象条件では、雪が溶け始める0℃前後の気温で発生しやすいとされており、積雪量・交通量・気温などの条件が重なることで起こりやすくなると考えられています。
つまり真冬よりも、冬の入口である11月から12月中旬あたり、1月、2月であれば大雪の後の少し気温が上がったときにこそできやすいと言えるのです。
興味深いのは、大型車混入率の高い道路ほど大きなコブができるという点です。
バスターミナルなどが近くにある交差点付近や荷下ろしのトラックなどが出入りするすすきのの仲通りなど、大型車両が繰り返し停止と発進を行うところでは、大きなそろばんが形成されがちです。
すなわち、コブの大きさはタイヤ自体の大きさと圧力の大きさの両者が決めていると考えられるのです。
さらに、商業施設の立体駐車場のように、限られたスペースで車の出入りが頻繁に行われる場所でも、そろばん道路が発生するケースが報告されています。
雪道のでこぼこ「そろばん道路」が危険な理由
そろばん道路の危険性は、単に路面がでこぼこしているだけではありません。
その見た目以上に運転へ影響を与えることがあるため、冬道では注意が必要です。
ここでは、どのような危険があるのかを詳しく見ていきましょう。
タイヤの接地面積が減り、グリップが低下する
そろばん道路の大きな危険の一つが、タイヤの接地面積が小さくなることです。
コブ状の氷の上を走行すると、タイヤが路面に接する面積が減少し、路面をしっかりつかむ力(グリップ)が弱くなります。
その結果、車が滑りやすくなり、特にカーブや交差点では走行が不安定になる危険が高まります。
制動距離が伸び、止まりにくくなる
でこぼこの路面では、タイヤが路面から浮きやすくなるため、ブレーキをかけても十分な力が路面に伝わらず、停止するまでの距離(制動距離)が長くなってしまいます。
また、路面から伝わる強い振動によって、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)が過敏に作動しやすくなることもあります。
ABSは、急ブレーキ時にタイヤのロックを防ぎ、車の姿勢を安定させながらハンドル操作もしやすくする安全装置です。
これが過敏に作動すると、ブレーキを踏んでいるのに止まらないという状態になりやすく、危険性をさらに高める可能性があります。
ハンドルが取られ、車体が不安定になる
そろばん道路では、でこぼこによって車体が大きく揺れたり跳ねたりするため、ハンドル操作が不安定になりやすくなります。
タイヤが一瞬でも路面から浮くと、その間はハンドル操作やブレーキが効きにくくなるため、万が一のときに危険を避けるのが難しくなります。
雪道のでこぼこ「そろばん道路」を安全に走行するコツ
そろばん道路の危険性がわかったところで、次は安全に走行するためのポイントを見ていきましょう。
ドライバーだけでなく、同乗者として知っておくことも、いざというときに役立ちます。
速度を落とし、車間距離を十分に取る
そろばん道路を走行する際は、まず速度を落とすことが基本です。
スピードを抑えることで車体の揺れが小さくなり、タイヤが路面に接している状態を保ちやすくなります。
そろばん道路に入ってからではなく、コブ状のでこぼこが見えた段階で速度を落とすようにしましょう。
また、前の車との車間距離を十分に確保することも重要です。
そろばん道路では制動距離が長くなりやすいため、万が一スリップしても追突を避けられるよう、余裕を持った走行が大切です。
急ハンドル・急ブレーキを避ける
でこぼこした雪道では、急な操作が事故につながりやすくなります。
急ハンドルはタイヤのグリップを失いやすく、車体が横滑りする原因になります。
また、急ブレーキも思うように止まれない場合があるため危険です。
できるだけ早めにアクセルを戻し、ゆっくり減速することが鉄則です。
雪道のでこぼこ「そろばん道路」を知って冬のドライブも安全に
そろばん道路とは、圧雪路の表面にそろばんの玉のようなコブ状のでこぼこが連なった雪道のことです。
北海道などの雪国で見られ、交差点や交通量の多い道路で発生しやすい特徴があります。
発生原因は完全には解明されていませんが、タイヤが路面に与える圧力変化と車両排熱による路面温度の変化が関係していると考えられています。
そろばん道路ではタイヤの接地面積が減るため、滑りやすくなり、ブレーキが効きづらくなったり、ハンドル操作が不安定になったりする危険があります。
同時に増幅された車両の振動が、橋梁や舗装などに大きな荷重負担をもたらすことにもつながります。
安全に走行するには、速度を落として車間距離を十分に取り、急ハンドル・急ブレーキを避けることが重要です。
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そろばん道路のような冬道特有の問題を解決するために欠かせないのが、道路や都市インフラの設計・維持管理に関わる技術と知識です。
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