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ChatGPTについて北海道科学⼤学 川上学⻑と学⽣が、どさんこワイド179から取材を受けました

川上 敬学長と学生が、急速に普及している「ChatGPT」に関する取材を受けた様子が2023年5月18日(木)のSTVどさんこワイド179で放送されました。

川上学長の専門分野ということもあり、興味深いお話をたくさん伺うことができました。

こちらの記事では、放送されなかった取材内容も一部ご紹介させていただきます。

2023年5月18日(木)放送 STVどさんこワイド179|結婚式のスピーチもお手の物「チャットGPT」

川上学長のChatGPTに関する取材内容のご紹介

Q:ChatGPTとは何でしょうか?

「ChatGPT」とは、進化したAI(⼈⼯知能)を使って、⼈間との⾃然なやり取りを⾔葉(⾃然⾔語)で出来るようになったAIソフトウエアと考えてください。

Q:なぜ今ChatGPTがいわゆる“バズって”いるのでしょうか?

これまでも特定の分野や仕事に高度なAIが活⽤されてきましたが、ChatGPTは⽼若男⼥のありとあらゆる⽅々が普段⾏っている活動(会話)がAIを相手に出来るようになった。そのAIが、とても簡単に使える割に非常に能⼒が高いということが最も重要で、注⽬を集めた要因と考えられます。

Q:これまでのAIと違いはあるのでしょうか?

もちろん技術的に大きな進化はあるのですが、⼀般の⽅々は技術的な違いを気にする必要はなく、あくまでも延⻑線上で「ついにここまで来た」と思っていただくのが良いと思います。

Q:ChatGPTで何ができるようになったのでしょうか?

⼈間にとって「⾔語」を習得するというのはかなりの⼿間がかかり、尚且つ扱い⽅は多岐多様で、例えば友だちと会話をする場合と論⽂を書くというのでは作法が違います。

⼈間は「⾔語」の扱い⽅を、それなりの訓練を積んで⾝に付ける必要があります。

ChatGPTでは、そのような⼈間のとても知的な活動となる「⾔語」を上⼿に取り扱う⼒がAIの仕組みの中に実現され、AIから⾮常に⾃然な⾔葉が出てくるようになりました。

人間の問いかけに対して、⽂章として問題なく成⽴する⾔葉がAIから⾃然に出てくるようになった、というのがChatGPTの⼤きな特徴です。

Q:ChatGPTは教育現場でどのような使用を考えていますか?

教育現場への影響はとても⼤きいと捉えています。 

ChatGPTが発表されたのが202211⽉末、そこから世界中の⼈々がChatGPTの凄さに気づき、あっという間におよそ2ヶ⽉程度でユーザー登録数が1億⼈を超えたと⾔われています。これは過去のTikTok等のアプリと⽐較して、1億⼈に到達したスピードが最速です。
そのくらい、AIの専門家以外にも大きなインパクトを与えました。

これまで教育現場で⾏っていたレポートや感想⽂を書くという宿題は、⽂章構造を訓練する目的にも使われてきた課題ですが、それが宿題として成⽴しなくなる可能性があります。
AIの⾔語を扱う能力が⾮常に高くなったことで、宿題を家に持ち帰ってChatGPTに投げかけると、理路整然としたそれらしい⽂章を書いてくれるためです。
これを書き写して提出してしまうと、⽂章構造に関する訓練がなされず必要な力が⾝につかない可能性があります。
これまで教育現場で考えていた教育体系が合わなくなってしまい、結果としてすべての教育に与える影響はとても⼤きくなってしまうでしょう。
専⾨知識についてもある程度の精度で答えてくれるので、知識を問うような学習や試験の在り方が変わってくる可能性があります。

このような状況で、⼤学として何らかのステートメントを発しないといけないと考え、主に学⽣に向けての「ChatGPTとの付き合い⽅」という意味でメッセージを出しました。

メッセージの趣旨は、自分自身に必要な⼒が育成されないような学びでは、今後多様化していく時代で⽣き残ってはいけないと考えています。
地力をつけるべきプロセスをAIを使⽤してショートカットするのではなく「これからの世界であたりまえの技術になるはずなので、ツールとして使⽤することは構わないが、AIツールに振り回される⼈間になってはいけない。いかにしてツールを活用しながら⾃らの⼒を付けていくか、ということを学⽣も教職員も考えながら教育に臨んでいただきたい」という意味でメッセージを出しました。

Q:ChatGPTは論文やレポートのある意味強い味方になると思いますが、使用禁止にはしないのでしょうか?

「使ってはいけない」という選択肢もあると考えています。
それは⾊々な⽅々が⾊々な議論をしていて、⼈間の(⼦供の)知能の発達過程の中でChatGPT等のツールを使⽤し知的プロセスをショートカットしてアウトプットを出すということが、どのくらい⼈間の成⻑に影響を与えるのか、今はまだ誰にも分かっていません。 

それを踏まえたうえで私たちは、これまでの価値観の延⻑線上として「⾃分⾃⾝の中にその⼒を付けていかないと将来⽣き残っていけない」という仮説の上で、ChatGPTとの付き合い⽅をこれから丁寧に説明していく、あるいは議論していくことになると考えています。 

本学では使⽤の禁⽌を想定していませんが、学生は改めて倫理観や個⼈の誠実さが問われるようになります。
またレポートの課題を与えて「書いて提出してください」だけではうまくいかなくなると思われるので、当然教員側の課題の出し⽅も進歩する必要があると考えています。
従来の課題提⽰の仕⽅のままで学⽣にだけ誠実さを求めても、それでは教員側が⼿を抜いていることになります。
AIを活用しても本当に学⽣⾃⾝に⼒が⾝につくような課題の出し⽅」や「⼒が⾝についているのかを正しく評価する⽅法」の議論が必要です。
AIという道具を使うとある程度のレベルまでアウトプットを引き上げてくれるので「どんな⼒が⾝についていて、どんな⼒が⾝についていないのか」を⾒極められる、あるいはフィードバックを学⽣にかけてあげられるような課題の出し⽅、評価の仕⽅を考えていかなくてはなりません。

そこには対⾯性(⼈間対⼈間)の部分が重要になったり、これまでよりも更に細かく「徐々に⾃⼒がついている」ことを確認しながら前に進んでいく教育になっていくのではないかと思います。

Q:普段私たちはどのようにChatGPTと向き合ったらいいでしょうか?

仕事に使うのであれば、使える可能性があるところは是⾮使⽤した⽅が良いと思います。それによって効率化されるところは沢⼭あります。
ChatGPTは⽂章を作るのが得意なので、何らかの原稿のドラフトを作成することや「⼀般論で⾔うとどうなのか」という問い掛けには理路整然とした⽂章を返してくれます。また定型の⽂章を作るのも得意です。
このようにChatGPTを使⽤することでこれまで掛けていた時間を短縮し、できた時間をその⼈らしい業務に当てることができるようになります。
他には企画⽴案にも使えます。企画の第⼀段階は簡単に作成してくれます。そこからブラッシュアップしていくというやり⽅に変えることができるので、仕事のやり方が随分変わっていくと思います。

ただしこれが通用するのは、あくまでも「⼀⼈前になった社会⼈」が活用した場合です。
様々な経験を苦しい思いをしながら積んだ⽅々は、ChatGPTをとても便利に使えると思います。
⼀⽅でまだ経験が少なく、十分に⾃⼒がついていない⽅々に、時間やコストをかけてでも様々な経験をさせる余裕のある企業や組織が少なくなり、彼らにとっては“どうやってその経験を積めばいいのか”という問題が今後起きてくると思います。

Q:ChatGPTが間違った情報を返してくるのは何故でしょうか?

技術的な話になりますが、ChatGPTを中⼼とする⾔語を取り扱うAIの⼤体の仕組みは、「⾔語モデル」というものを作ることで⾔語を取り扱えるようにしています。

ChatGPTの大規模⾔語モデルがやっていることは、インターネットにある膨大な量の⾔葉たちを学習し、質問への返答として「よくありそうな単語」や「適切だと思われる単語」を順に出⼒するという仕組みからうまれます。そこで誤りが紛れ込んでしまいます。

⾔語モデルの精度はとても⾼くなってきていて誤りは減ってきていますが、現在の仕組みのままであれば間違いをゼロにすることは、インターネットの世界から間違いをなくすことと同様に難しいと考えられます。

そのためChatGPTが出した結果を⾒て「これは違う」「これは変だな」と気づいて修正・加筆する⼒のある【⾃⼒を持った⼈間】が使わないと、誤った情報のままで物事を進めてしまい⼤変な事になってしまいます。

Q:ChatGPTの使用上の注意点を教えてください

ChatGPTに⼊⼒した内容は、今度はAIが学習すべきデータになってしまいます。

例えば研究はオリジナリティを競うもので「世界にないもの」を⾒つけるのが研究の領域なので、ChatGPTに⾃分たちが苦労して掴んだオリジナリティや未公表の情報を⼊⼒してしまうと、それがAIの学習対象になってしまいます。

個⼈のプライバシーに関することも⼊⼒してしまうと、それも「出力して良い情報」になってしまいます。ChatGPTに⼊⼒した情報は、全て大規模言語モデルの学習用にオープンになってしまいます。

そのため使⽤する際には、オリジナリティやプライバシーの内容は除外するか、オープンにして問題ない情報に差し替えてChatGPTに入力するという処理が必要です。

Q:リテラシーの教育も重要ということでしょうか?

現在の規約では13歳以下は使⽤不可となっていて、⽇本であれば⼩学⽣以下は使⽤ができないようですが、中学⽣以上は活⽤できるツールとなるため、⾃⼒を⾝につける教育が早い段階から求められます。

具体的には、本学では2024年4⽉からHUSスタンダードという新しい教育プログラムがスタートします。
HUSスタンダードでは、コミュニケーション⼒、課題発⾒解決⼒、⾃⼰管理⼒・⾃⼰向上⼒、多様な視点から物事を捉え、異なる意⾒を理解する⼒を全学⽣に⾝につけるためのプログラムとなっていて、しっかりと⾃⼒を育成していく体制づくりをしています。

また202541⽇には現在の⼯学部 情報⼯学科を改組し「情報科学部(仮称・設置構想中)」を新設して、更にIT⼈材の育成に⼒を⼊れていく⽅針となっています。 

「ツールに利⽤される⼈間ではなく、ツールを正しく有効活⽤できる⼈材」をより多く育成し、地域の課題解決に貢献できる⼈材の輩出に⼒をいれていきます。 

ぜひこれからの北海道科学⼤学にご期待ください。