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地域とつながる先端ARプロジェクト -「あるくていねく」で学んだ“伝える力”と“つくる力”

地域とつながる先端ARプロジェクト -「あるくていねく」で学んだ“伝える力”と“つくる力”

北海道科学大学未来デザイン学部では、地域の健康増進のきっかけづくりを目指し、地域社会と連携した先進的な事業「あるくていねく」に取り組んでいます。
「あるくていねく」では、JR手稲駅周辺をウォーキングエリアとして活用するために2023年度後期から継続して、本学人間社会学科の道尾 准教授をコーディネーターに、北海道科学大学、札幌市手稲区介護予防センター、手稲地区リハビリテーション関連職種協議会の三者による協働が進められています。2024年度7月は、手稲区民ホールと手稲空中歩廊にて、地域の高齢者100名程度にリーフレットタイプのウォーキングマップを体験していただく「あるくていねく大調査2024」を実施しました。加えて、同年度3月には、このマップに、理学療法士監修による歩行やストレッチの動作を再現・再生するARコンテンツを追加して、「あるくていねく大調査2024 第二弾」を実施し、開発学生はじめ、未来デザイン学部、工学部(情報工学科)の学生が多数参画して、地域の高齢者と交流しました。

ARコンテンツの制作について

本プロジェクトでは現在も、同じ未来デザイン学部に所属するメディアデザイン学科と人間社会学科の学部横断的な連携により、より効果的かつ体験的な健康支援のかたちを模索しています。

「あるくていねく大調査2024 第二弾」に向けて、3Dモデリングやモーションキャプチャを活用したAR(拡張現実)技術を用い、歩行やストレッチ時の姿勢をスマートフォンで確認できるARの開発が進められました。メディアデザイン学科の趙 領逸教授の指導のもと、高齢のユーザーにとっても、視覚的にわかりやすく親しみやすいARコンテンツを提示することが模索されました。

このような異なる専門領域が連携した取り組みは、未来デザイン学部の教育の特徴でもあり、今後も社会課題に向き合うためには、こうした学部内連携をいっそう推進・強化していくことが必要不可欠です。

この記事では、現在ARコンテンツの制作に主体的に関わっている3名の学生にお話を伺いました。それぞれの学生が異なる技術分野を担当し、学内外の専門家と連携しながら、手稲区の住民に向けたARコンテンツの制作に挑戦しました。

【実践のなかで鍛えられた表現と実装力】

【モーションキャプチャ担当学生】

「理学療法士の方にご協力いただき取得したモーションデータは、システム上どうしてもブレやノイズが多く記録されるので、そのままでは意図した動きが伝わりません。そこで、キーフレームを最小限に抑えつつ、自然な動きを維持するように細心の注意を払いました。」

【キャラクター3Dモデル設計担当学生:櫛引さん】

「モーションの正確な再現性と、高齢者の方々にとっての親しみやすさのバランスを取ることに苦心しました。女性モデルのイラストを担当した先輩とも協力して、もともとのイラストがもつ「らしさ」を失うことのないよう、試行錯誤の結果、ユーザーにとって直感的でわかりやすいキャラクターをデザインできたと思います。」

【AR体験実装担当学生:澤田石さん】

「Adobe Aeroを用いてAR体験の実装を担当し、オブジェクトのサイズや角度を柔軟に調整できるインターフェースを設計しました。趙先生から『デジタル技術を社会に活かすには、まず“使う人”を中心に考えることが重要だ』というアドバイスをいただき、体験者の理解を促すために音声ガイダンスを先に再生するなどの工夫を凝らしました。」

【チームで学んだ調整力と伝達力】

異なる形式や技術領域で作業を進めるチーム制作では、進捗管理や情報共有の難しさに直面しました。自分の思い込みから認識のずれが生じた場面もありましたが、それらを乗り越える過程で、学生たちは「チームで協働する力」を実践的に学びました。今回のARコンテンツ開発においても、イラスト担当、シナリオ担当、音声担当、リーフレット更新担当など、学生たちは多彩に活躍しました。

【他学科との連携から得た“正しさ”へのまなざし】

理学療法の専門家や、福祉・介護予防の実務家、人間社会学科との連携を通じて、「安全で正しい動き」を伝えることの重要性を強く認識しました。身体の仕組みに関する専門的な知識を得ることで、3Dモデルの形状や動きの再現性にも大きな改善が見られました。

【地域に伝わった“新しい体験”】

完成したARコンテンツは、「あるくていねく」イベントで地域住民の方々に公開されました。ARを初めて体験する参加者の方々から「わかりやすい」「楽しい」といった肯定的な反応をいただき、学生たちはテクノロジーと福祉が結びつく可能性を肌で感じることができました。

【他者の視点を持つことから始まるデザイン】

「誰のために、何のために制作するのか」という視点を常に持つことが、学生たちのデザインの質を大きく向上させました。この経験は、将来の企画力や表現力を養う上で貴重な学びの機会となりました。今後も未来デザイン学部では、メディアデザインと社会課題を結びつける学際的な連携を通して、学生の実践力と社会的な視野を育む教育を推進していきます。