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薬剤耐性菌とは?仕組みと予防法を簡単に解説

2026.01.21

この記事について

薬が効かない「薬剤耐性菌」という言葉を耳にしたことはありますか?
薬剤耐性菌は今、世界的に深刻な公衆衛生の問題として注目されています。

今回のコラムでは、薬剤耐性菌とは何か、その発生の仕組みや原因、危険性を簡単にわかりやすく解説します。

薬剤耐性菌を増やさないために、私たちが日常でできる予防についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 薬学部 薬学科

助教星 貴薫Hoshi Takanobu

小学生の頃「祖父の病気を治すくすりを作りたい」と思ったことが原点となり、薬剤師の道に進みました。

急性期病院で院内感染対策や抗微生物薬適正使用に携わる中で、薬剤耐性菌問題の深刻さを痛感し、抗微生物薬適正使用支援が患者予後に与える影響を評価しています。
臨床での疑問を研究テーマにし、その成果を再び臨床へ還元する「現場主義」の研究姿勢を大切にしています。

薬剤耐性菌とは?簡単に解説

薬剤耐性菌とは、本来効くはずの薬に強くなり、治療効果が得られにくくなった微生物のことです。
例えば、抗菌薬は細菌による感染症を治すために使われますが、誤った使い方を続けると、細菌が薬に「慣れて」しまうことがあります。

私たちの体内にはさまざまな細菌が存在し、普段はバランスを取りながら共存しています。
しかし、抗菌薬を使用すると、薬に弱い菌は死滅し、強い菌だけが生き残ります。
その強い細菌が増えることで、「薬が効きにくい菌=薬剤耐性菌」が生まれてしまうのです。

このように微生物に対する薬が効きにくくなる現象を「薬剤耐性(AMR)」と呼びます。
耐性菌が増加すると、これまで治療できていた感染症の治療が難しくなるおそれがあります。

薬剤耐性菌が生まれる主な原因

薬剤耐性菌が生まれる大きな要因は、抗菌薬の「誤った使用」です。
以下のようなケースが代表的な抗菌薬の使い方です。

不要な場面で抗菌薬を使う

抗菌薬は細菌にのみ効果を示します。

例えば風邪の多くはウイルスが原因なので、抗菌薬が不要なことが多いです。
本来、抗菌薬の出番ではないときに抗菌薬を服用すると、体内の細菌が無駄に薬にさらされることで、耐性菌を生み出すきっかけとなります。

服用を途中でやめてしまう

医師に「5日間飲み切ってください」と指示された薬を、症状が軽くなったからと2日でやめてしまうのは危険です。
中途半端に薬に細菌がさらされることで一部の細菌が生き残り、薬に強くなってしまうことがあります。

自己判断で量を減らす

例えば「1日2回」と処方されている薬を「1日1回だけ」などに減らしてしまうと、十分な効果が得られず、菌が耐性を持つきっかけになります。

薬剤耐性菌がもたらすリスク

耐性菌が増えると、これまで薬で治せていた感染症の治療が難しくなります。
例えば肺炎や尿路感染、傷口の化膿など、身近な病気でも治療が困難になる可能性があります。

世界規模で拡大する薬剤耐性菌

薬剤耐性菌は世界中に広がっており、すでに世界的な公衆衛生上の問題となっています。

世界保健機関(WHO)の報告によると、2019年に薬剤耐性菌が直接的な原因となって約127万人が死亡し、薬剤耐性菌の関連死を含めると約495万人にのぼったとされています。このまま薬剤耐性菌に対する対策が進まなければ、2050年には年間1,000万人が亡くなる可能性が予測されています。
※引用:Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis
Murray, Christopher J L et al.
The Lancet, Volume 399, Issue 10325, 629 - 655

また、国立国際医療研究センターによる推計では、日本では2種類の耐性菌による感染症だけでも年間約8,000人が亡くなっているといわれています。
※引用:National trend of blood-stream infection attributable deaths caused by Staphylococcus aureus and Escherichia coli in Japan
Tsuzuki, Shinya et al.
Journal of Infection and Chemotherapy, Volume 26, Issue 4, 367 - 371

また、このような耐性菌は感染していても症状が出ないことがあり、本人が気づかないまま耐性菌を広めてしまうことがあり、「サイレント・パンデミック」と呼ばれています。

代表的な耐性菌の例

代表的な耐性菌として、食中毒の原因としても知られている「黄色ブドウ球菌」にも耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が存在します。
かつては抗菌薬で通常に治療していた黄色ブドウ球菌ですが、薬が効かないタイプが出現し、医療現場の問題となっています。

このように耐性菌が蔓延すると、新しい抗菌薬を開発しても、さらに強い耐性菌が現れる「いたちごっこ」が続いてしまいます。

薬剤耐性菌を増やさないための対策

薬を服用する女性

薬剤耐性菌の広がりを防ぐには、私たち一人ひとりの意識と行動が欠かせません。
今日から取り入れられる具体的な対策を紹介します。

感染を防ぎ、抗菌薬の使用を減らす

感染症にかからなければ抗菌薬を使う機会も減ります。
まずは日常的な感染予防を心がけましょう。

【日常の感染対策】

  • 外出後や食事前には石けんで丁寧に手を洗う
  • うがいで口内を清潔に保つ
  • 人混みに行く場合、感染症の流行時期はマスクで飛沫(ひまつ)感染を防ぐ
  • アルコールで手指を消毒する
  • 食肉はよく火を通す
  • コンドームの適正な使用(性感染症予防)

【抵抗力を高める生活習慣】

  • バランスの取れた食事と質の高い睡眠を心がける
  • 適度な運動を取り入れる
  • ストレスをためない工夫する

ワクチンで予防する

肺炎球菌やHib(インフルエンザ桿菌)、破傷風、百日せきなどはワクチン接種で防ぐことができます。
接種が推奨されているワクチンは、忘れずに受けておきましょう。

処方された抗菌薬は指示通りに正しく使う

抗菌薬をもらったら、医師や薬剤師の指示を必ず守りましょう。
途中で服用をやめたり量を減らしたりすると、体内の菌が耐性を持ちやすくなってしまいます。

守るポイントは以下の通りです。

  • 指定された日数をきちんと飲み切る
  • 症状が軽くなっても途中でやめない
  • 回数や量を自己判断で変えない
  • 飲み忘れ防止のために時間を決めて服用する

以前の薬を自己判断で使わない

以前処方された抗菌薬が残っていても、症状が似ているからといって自ら使ったり、他人に譲ることは避けましょう。
原因となる菌が異なる場合、不適切な薬を服用することで耐性菌を増やす恐れがあります。

なお、風邪の多くはウイルスが原因なので、抗菌薬の出番は少ないです。
不安なときは薬剤師にも相談して、正しい知識をもって薬と付き合いましょう。

薬剤耐性菌とは薬が効かない菌!正しい知識と行動で防ごう

薬剤耐性菌とは、薬に抵抗力を持ち、治療が難しくなった微生物のことです。
主な原因は抗菌薬の誤った使い方で、薬に強い菌が生き残ることで薬剤耐性菌は増えていきます。

今や薬剤耐性菌は世界的な問題となっており、感染症治療が難渋化してきています。

私たちができる対策は、手洗いやうがい、ワクチン接種などの基本的な感染予防、そして抗菌薬を処方された際には「用量・回数・期間」を守って正しく使用することです。

ウイルスが原因の病気には抗菌薬が効かないという正しい理解を持つことも大切です。
日々の小さな心がけが、薬剤耐性菌の拡大を防ぐ大きな力になります。

北海道科学大学薬学部薬学科で薬学を学びませんか?

薬剤耐性菌の問題は世界中で深刻化しており、解決には薬学の専門知識が不可欠です。

北海道科学大学薬学部薬学科では、耐性菌を含む感染症やその治療薬について、幅広い知識を総合的に学べる環境が整っています。

高齢化が進む現代日本において、医薬品の需要は今後も増加の一途をたどり、薬の専門家の役割はさらに重要性を増すことでしょう。
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