心不全とは?原因や症状、治療法などを簡単に紹介



この記事について
日本人の死因のトップ3は、悪性新生物(がん)、心疾患、老衰です。
そして心疾患での死亡では、心不全が原因となるケースが一番多いのです。
そこで今回のコラムは、心不全の基本的な知識から原因、症状、治療法まで簡単にわかりやすく解説します。
心不全について、基本知識を一緒に学びましょう。
このコラムは、私が監修しました!
教授三浦 哲嗣Miura Tetsuji循環器内科学 薬理学
私は医学研究者であった叔父の影響を受けて医学部に入り、卒業後は循環器内科医と研究者を兼ねる仕事を続けてきました。心臓は「筋肉でできた単なる血液を送るポンプ」と思われがちですが、人体のさまざまな臓器が必要とする血液の量は、その時の人の活動の種類と程度で大きく変わります。心臓と血管には「それぞれの臓器がその時に必要としているだけの血液を送る」ことを可能とする驚くほど精密な仕組みがあります。その仕組みが障害されている代表的な疾患である心不全をテーマに、海外の研究者とも協力しながら研究してきました。心不全の研究はこの30年間に進歩を続けてきましたが、心不全はまだ「完治」できない病気です。
学生諸君には、講義を通して循環器疾患の病態と薬物治療とのつながりを理解し、若い世代に期待されている研究課題についても知って欲しいと思っています。
目次
心不全とは?簡単に解説!
心不全とは、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」(日本循環器学会・日本心不全学会)と言えます。
「心不全」は、心臓の病気だけでなく加齢など心臓以外の病気が原因の場合もありますが、心臓のポンプ機能が低下して起きている状態全体のことを指しています。
症状には動悸や息切れ、むくみなどがあり次第に悪化して命の危険につながることもあります。
心臓には、右心室・右心房(右心系)と左心室・左心房(左心系)という4つの部屋があります。
右心系は全身から戻ってきた血液を受け取って肺へ送る役割を持っていて、肺で酸素受け取った血液は左心系に運ばれ、左心系は血液を全身に送り出す役割を持っています。
成人の場合、安静にしている時には心臓からは1分間に3〜4リットルの血液が全身に送りだされています。
そして運動など体に多くの血液を送り出す必要があるときには、心臓は血管との共同作業によって必要に応じた量まで(最大で安静の時の4~5倍)送り出す血液の量を増やすことができます。
これが正常な心臓のはたらきです。
心不全はこうした正常のはたらきが出来ない状態です。
左心不全と右心不全
右心系と左心系にははたらきに違いがあるので、どちらが主に障害されるかによって心不全の状態に違いが現れます。
左心不全は、左心系の機能が低下して起こる心不全です。
左心系の機能が弱いと、全身に血液(酸素)が十分に送り出せません。
また、肺から血液をしっかり受け取れないので、肺や肺静脈でも血流が滞り、肺循環系がうっ血したり水がたまったりしてしまいます。
一方、右心不全は右心系の機能が低下して起こる心不全です。
肺にしっかり血液を送れないので、右心系や全身の血流が滞ってしまいます。
その結果、肝臓の腫れや、腹水、手足のむくみなど、体循環系のうっ血が引き起こされるのです。
心不全の多くのケースでは、程度の異なる左心不全・右心不全が組み合わさった状態がみられます。
急性心不全と慢性心不全
急性心不全は心臓の働きが急に障害されて心不全が急に起こる場合、慢性心不全は心不全が徐々に進行する場合をさします。
急性心不全では心臓から送り出される血液が急激に大きく低下し、激しい呼吸困難などの症状が急激に起こり、ショック状態になってしまうこともあり、命の危険もあります。
慢性心不全は、初期は症状が出にくく、症状を自覚するころには悪化しているケースも。
慢性心不全が重症化すると、急性心不全の発作を起こすようになってしまいます。
心不全が起こる原因
心不全は、心臓の病気が原因で起こる場合と心臓以外の原因によって心臓への負担が大きくなって起こる場合があります。
心不全を起こす心臓の病気としては、心臓自体に血液を送っている血管(冠動脈)が狭くなる病気である狭心症や心筋梗塞、心臓の弁が損なわれる弁膜症、心臓の筋肉に異常が起こる心筋症、拍動が乱れる不整脈、抗不整脈薬や抗がん剤などの薬剤による心臓の障害などが含まれます。
心臓への負担を大きくして心不全を起こす原因には、高血圧、甲状腺の病気、重症な貧血などがあります。
心不全の症状

心不全はさまざまな症状を引き起こしますが、主な症状には以下のようなものがあります。
- 動作時の息切れ
- 動悸
- 疲れやすい、倦怠感
- 足のむくみ
- 急激な体重増加
- 夜間の頻尿
- 食後の腹部の張り
- 横になると呼吸が苦しい(起坐呼吸) など
全身に十分な血液が送り出せないことから必要な酸素や栄養素が足りていない、血液の流れが滞ってうっ血していることなどからこのような症状が現れます。
心不全の検査方法と治療法
心不全の診断では、以下のような検査が行われます。
- 血液検査:心臓に負担がかかると心臓から出るホルモン(BNP, NT-proBNP)の値を測定
- 胸部レントゲン:心臓の状態や肺のうっ血などを確認
- 心電図:不整脈や心筋梗塞の有無を確認
- 心エコー:心臓の大きさや筋肉の厚さ、機能を確認
- 心臓MRI:心臓の筋肉の状態を詳細に確認
- 心臓カテーテル検査:心臓内の圧力や血流を確認
心不全の治療は、症状の程度や原因となる病気によっても異なります。
急性心不全の治療では救命が第一の目的、慢性心不全では症状の改善と寿命をのばすことが目的となります。
まずは薬剤によって症状と心臓の機能の改善を目指します。
動脈硬化や慢性的な心臓への負担を防ぐために、食事や生活習慣改善の指導も行います。
特定の心臓の病気が心不全の原因になっている場合は、その病気の治療も必要です。
原因となる病気によっては冠動脈に対する治療のほか、カテーテル治療(血管に入れた管を使った治療)や開胸手術、ペースメーカーや補助人工心臓、心臓移植などが必要なケースも。
心不全は早期発見と適切な治療により、症状をコントロールし、寿命を延ばすことが可能です。
気になる症状がある場合は早めに主治医に相談しましょう。
心不全とは心臓の機能低下で血液を身体の必要に応じて十分に送り出せない状態のこと
心不全とは、心臓の血液ポンプ機能が低下し、さまざまな症状が現れる状態のことです。
特定の病気の名前ではありません。
心不全では、心臓から全身へ送り出す血液量の調節が十分できなくなり(余裕がなくなり)、身体が必要とする量の血液を全身や肺に送り出せなくなることが起きます。
急激に症状が現れる急性心不全と徐々に進行する慢性心不全があります。
心不全の主な原因には虚血性心疾患、高血圧、心筋症などがあり、特定の薬剤によって心不全を引き起こすケースも。
心不全の症状は息切れや動悸、疲労感、むくみ、呼吸困難など多岐にわたります。
診断には血液検査や心エコーなどが用いられ、治療は症状の程度や原因に応じて薬物療法や生活習慣の改善、原因疾患の治療のために手術が必要な場合もあります。
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