飛行機はなぜ飛べる?飛行に関わる4つの力と仕組みを解説!

テクノロジー2023.09.29

この記事について

飛行機はなぜ空を飛べるのかと考えたことはありませんか?

ANAで現役で活躍しているジェット機「B777-300ER」の重さは機体だけでも約160トン、乗客や荷物、燃料を含めると最大で約350トン程度にまでなります。

これだけの重量の飛行機を空に浮かせるために、どのような作用力が働いているのでしょうか?

今回は、飛行機が空を飛ぶ際に作用している4つの力と、力を生み出すための仕組みを解説します。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 工学部 機械工学科

准教授平元 理峰 Hiramoto Riho機械工学

私が「流体」の世界に踏み込んだきっかけは,中学生の時に観た映画「風の谷のナウシカ」に現れたメーヴェという飛行機(?)でした.自由に大空を飛び回ることができたらどんなに爽快であろうかと夢想すると同時に,メーヴェについているジェットエンジンとは何なのか,そもそもどうして空を飛べるのかを疑問に思い始めました.そこでメーヴェを作ろう!となり,航空力学の入門書を購入しました.当時は全く理解できませんでしたが,今はかなり理解できていると思います(笑).今の私は,「飛行機がどうして飛べるのか」を子供を含む専門外の人に理解してもらえる「うまい解説ができるようになる」ことがライフワークの一つになっています.

飛行機はなぜ飛べる?飛行するための4つの力とは

飛行機が飛ぶ際には、揚力、推力、抗力、重力の4つの力が関係します。

  • 揚力:物体が向かう方向に対して垂直方向に働く力
  • 推力(推進力):物体を運動方向へ推し進める力
  • 抗力:物体の運動を妨げる力
  • 重力:物体を地面(地球)側に引き寄せる力

「揚力」は飛行機が浮くための力、「推力」は飛行機を前へ進める力です。
揚力は翼の特殊なデザインによって、推力はエンジンやプロペラによって生じます。

ただし、飛行機が飛ぶ際には飛行機が進む方向の反対向きに妨げる力「抗力」と、地球の引力により地面の方へ引き寄せる「重力」も働きます。

そのため、安全に飛行させるには重力に逆らって揚力を発生させること、抗力に負けない推力を発生させること、飛行中に重力と揚力が釣り合うように調整することが必要です。

重力に打ち勝つ揚力を生む「主翼」の仕組み、抗力に打ち勝つ推力を生む「エンジン・プロペラ」の仕組みについて、次でご説明していきましょう。

飛行機を”浮かす”ための「揚力」を生み出す主翼の仕組み

飛行機の窓から見た飛行機の翼

揚力とは、物体の動きに対して垂直方向に働く力であるとご説明しました。

飛行機の下から上に向かって揚力を発生させ、その揚力が重力よりも大きければ機体を空に浮かばせることができます。

このように重力に逆らって大きな揚力を生み出すことには、「主翼」のデザインが関係しています。

揚力を生み出し飛行機を浮かす主翼の仕組み

飛行機の主翼は、機体の真上から見た面が上に丸く盛り上がった曲線の形状になっており、機体の真下から見た面は直線状になっています。

主翼が飛行機の正面から強い風を受けると、上下の形状の違いにより上側の空気の流れは速く、下側の空気の流れは上側よりも遅くなります。

この空気の流れの速さの違いによって、主翼の上側の圧力は下側よりも小さくなります。
これを「ベルヌーイの定理」といいます。

圧力は主翼の表面を押す力であるため、主翼の上下で押し合いした結果、主翼(機体)を上側へ押し上げる揚力が生まれます。

このようにして、約350トンもの機体を浮かすだけの揚力を生み出しているのです。

揚力を効率よく生む主翼の工夫「スラット」「フラップ」

飛行機の主翼の表面をよく見ると、ところどころに切れ込みが入っているのをご存じでしょうか。

飛行機は着陸から離陸まで一定の速度で進んでいるわけではなく、浮かび上がるために必要な揚力と、浮かび上がった後に必要な揚力は異なります。

そこで「スラット」や「フラップ」と呼ばれる高揚力装置を翼の前方と後方で出し入れすることで、主翼が受ける空気の流れを整えながら揚力をコントロールしています。

飛行機を”前に進める”「推力」を生むエンジンとプロペラの仕組み

飛行機のジェットエンジン部分

空を飛んでいる飛行機を見ても、それほど早く進んでいる印象は受けないかもしれませんが、実は飛行機は時速900kmもの速さで前に進んでいます。

推力が抗力を上回ると機体は前へ加速しますが、このためには相当な推力が必要です。

そのカギが大きな推力を生み出す「エンジン」と「プロペラ」の仕組みです。

大きな推力を生み出す「エンジン」「プロペラ」の仕組み

飛行機(旅客機)のエンジン(ターボファンエンジン)では、エンジンの前側から大きなファン(プロペラ)で空気を吸い込んで後方に噴射するとともに、吸い込んだ空気の一部を燃料の燃焼に使用して、膨張した燃焼ガスを後方へ噴射しています。

まず、高圧の空気を燃焼室に送り、空気と燃料を混ぜて点火。
高温の膨張した燃焼ガスを後方に噴射することで推力を発生させるとともに、燃焼ガスでタービンを回転させ、その回転をエンジン前部のプロペラに伝え空気の吸い込みと後方へ噴射に利用して大きな推力を発生させて前へ進むのです。

液体や気体を噴射することで噴射とは逆方向に推力を生み出す仕組みを「ジェット推進」といいます。

飛行機にはジェット機・プロペラ機と呼ばれる機体が存在しますが、いずれもこのジェット推進を用いて推力を生み出しているのです。

プロペラは先端に向かってねじれたような形状になっており、回転することで空気に力を与えて機体後方に噴射し、一方で機体は反作用によって前方への推力を得ます。

プロペラ機はジェット機よりも推進効率が良いため、燃料に限りがある小型機に活用されることが多いです。

飛行機はなぜ飛べるのかは物理学がカギ!気になる方は北海道科学大へ

飛行機が空を飛ぶことには推力、抗力、揚力、重力の4つの力が関係しており、上手くコントロールすることが必要です。

飛行機は、主翼を上部と下部で形を変えることで空気の流れ(速さ)を変え、ベルヌーイの定理により揚力を生み出し、重力に打ち勝つことで機体を浮かせることができます。

さらに、ジェットエンジンを利用して抗力に負けない高い推力を生み出すことで、上空において時速900kmもの速さでの移動を実現しています。

推力、抗力、揚力、重力のバランスが崩れると飛行機はうまく空を飛ぶことができません。

当たり前のように空を飛んでいる飛行機ですが、さまざまな物理学を応用して実現しているのですね。

「飛行機はなぜ飛べるのか?」がもっとわかる出前授業もできます!

北海道科学大学機械工学科の平元 理峰准教授が本記事と同じテーマの「飛行機はなぜ飛べるのか?」講座を行えます。

「飛行機が空を飛べるのはどうしてか、不思議に思ったこと がある人にはぜひ聴いて頂きたい講義です。飛行機が空 を飛ぶ仕組みは、実は誰もが知っているあの現象と同じで す。ミニ実験を交えて楽しんで理解してもらいたいと思います。」

高等学校をはじめ中学校・小学校の関係者の方でご興味のある方はぜひ下記から問い合わせください。

北海道科学大学出前授業

このような物理学や、科学・技術を応用して暮らしの役に立つものを生み出す学問分野を「工学」というのをご存じでしょうか。

工学に興味がある方や工学を学びたい方は、北海道科学大学工学部機械工学科へぜひお越しくださいね。
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