アニサキスとは?食中毒の原因や症状、予防策をチェック

健康2024.05.09

この記事について

突然ですが、「アニサキス」を知っていますか?


アニサキスは海にいる哺乳類や魚介類を宿主とする寄生虫(線虫)の一種です。
私たちが普段食べている魚介類にも寄生していて、生きたまま摂取してしまうと、アニサキス症という食中毒を引き起こす可能性があります。特にお寿司やお刺身など、生の魚介類を食べるときは注意が必要。
食後数時間で激しい腹痛や嘔吐などの症状があれば、それはアニサキスによる食中毒かもしれません。


今回は、そんなアニサキスによる食中毒の症状や治療法、予防対策などについて解説。
どんなことに気を付けたら魚介類を安全に美味しく食べられるのか、一緒に学んでいきましょう!

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 薬学部 薬学科

教授丁野 純男Chono Sumio薬学

私の研究室では、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究に取り組んでいます。DDSは、体内などの特定の場所に有効成分を送り届ける科学技術です。このDDS技術を応用することで、例えば、薬の成分を体の中の病気の細胞だけに送り届けることができるようになり、一方で、病気になっていない正常な細胞には薬の成分が届かないため、効率よくかつ強力な薬効が得られるとともに、副作用の発現を回避することができます。このDDSの概念に魅力と面白さを感じ、大学院生時代から一貫してDDS研究に向き合い、研究の進展に一喜一憂する日々を過ごしています。
これまで、感染症、心血管疾患、呼吸器疾患など病気の治療や診断を目的とするDDSの開発に注力してきましたが、最近では、SDGsを意識して視点を広げ、地球環境の浄化、寄生虫・害虫駆除、花卉の品質向上などにDDSを応用する研究にも着手しています。その一つとして、DDS技術でアニサキスを駆虫する研究にも力を注いでおり、研究成果を特許出願しました。アニサキス駆虫薬やアニサキス症を予防できる飲食品を社会実装する日が近いのではないかと期待しています。

アニサキスとは

アニサキスとは、寄生虫(線虫)の一種のこと。
本来は海洋の哺乳類や魚介類などに寄生し、宿主を変えながら成長して一生を終える生物です。

ところが、私たちが普段食べている魚介類にもアニサキスが寄生しているため、人間が摂取してしまうことがあります。

アニサキスはヒトの体内で成長したり、長い間生き続けたりすることはできません。
ただし、生きている間は激しい腹痛などの症状を引き起こす食中毒の原因になることがあるため、注意が必要です。

アニサキスは次のような魚介類に多く寄生しています。

  • サバ
  • アジ
  • サンマ
  • カツオ
  • イワシ
  • イカ
  • ニシン
  • サケ
  • タラ
  • ホッケ など

魚介類が生きているうちは内臓表面などに寄生。
宿主が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉(身の部分)へと寄生場所を移す習性があります。

次は魚介類に寄生するアニサキスの特徴です。

  • 体長:約2~3cm
  • 幅:約0.5~1mm
  • 色:白色、半透明な白色
  • 見た目:糸状
  • 生息可能温度:マイナス20℃以上40℃以下

魚介類に寄生するアニサキスは幼虫です。
表面にいる個体は目視で確認できますが、筋肉に入り込んでしまうと発見が難しい場合も。
アニサキスは紫外線に反応して光る習性があるため、ブラックライトで照らすと見つけやすくなります。

アニサキスによる食中毒の原因と症状

魚に寄生するアニサキス

アニサキスによる食中毒は、アニサキスが寄生した魚介類を食べてしまったからといって発症するわけではありません。
どのようなことが原因で発症するのか、食中毒の症状についても解説します。

アニサキスによる食中毒(アニサキス症)の原因

アニサキスが原因で起こる食中毒のことを「アニサキス症」と呼びます。
アニサキス症は、生きたアニサキスの幼虫が人間の体内に入り、胃壁や腸壁などの粘膜を突き刺すことで発症します。

アニサキスは、そもそも人間に寄生することのない生物。
生きたアニサキスが人間の体内に入るきっかけは、魚介類を生で食べたり、冷凍や加熱が不十分な状態で食べたりすることにあります。

お寿司やお刺身など、魚介類の生食を好む日本では、その食文化も発症しやすい要因の一つとなっています。

アニサキスによる食中毒(アニサキス症)の症状

症状はアニサキスの寄生部位で分類されます。

胃アニサキス症

アニサキスの幼虫が胃壁に突き刺さることで発症します。
主な症状は、みぞおちの激しい痛み(上腹部痛)、吐き気、嘔吐、悪心など。
魚介類を食べて数時間後〜十数時間後に症状が現れます。

腸アニサキス症

アニサキスの幼虫が腸壁に突き刺さることで発症。
主な症状は、激しい下腹部痛、吐き気、嘔吐、悪心、腹膜炎症状など。
魚介類を食べて十数時間後〜数日後に症状が現れます。

まれですが、腸閉塞・腸穿孔といった合併症を引き起こすこともあります。

消化管外アニサキス症

発症はまれです。
アニサキスの幼虫が消化管を貫通して腹腔内に脱出。
大網、腸間膜、腹壁皮下などに移り、肉芽腫を形成していることもあります。

主な症状は、アニサキスの幼虫がいる部位に応じて現れます。

アニサキスアレルギー

アニサキスが抗原となって起こるアレルギー反応です。
主な症状は、蕁麻疹、血圧の降下、呼吸不全、意識消失など。

アニサキス症に伴って起きる場合のほか、摂取したアニサキスが死んでいても食物アレルギーと同様に発症する場合があります。
食べてから症状が現れるまでは、数分〜数時間。
アナフィラキシーの場合は命の危険性もあるため、注意が必要です。

このほか、急性と慢性に分けられ、慢性ではアニサキスが体内に入っても自覚症状が出ないケースもあります。
いずれも、アニサキス症を疑う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

アニサキスの治療方法

治療方法は、体内に入ったアニサキスを確認して除去するのが一般的。
今のところ、アニサキスを駆虫する有効な治療薬はありません。
そのため、内視鏡検査時に発見したアニサキスを摘出するか、内視鏡検査で確認できない場合は超音波(エコー)検査、腹部X線検査、血液検査などを行い、部位ごとの対症療法となります。

また、腸閉塞や腸穿孔といった合併症がある場合は外科的処置を行うこともあります。

アニサキスによる食中毒の予防・対策法

アニサキスによる食中毒を予防し、安全に魚介類を食べるには、次の3つの予防・対策法を試してみてください。

予防・対策法①魚介類の生食を避ける

鮮度が落ちた魚介類は生で食べない、内臓は生で食べないといった予防が有効です。

魚介類が生きているときからアニサキスが筋肉(身の部分)へと移動している場合もあるため、注意が必要。
鮮度が落ちている場合などは加熱して、早めに食べるようにしましょう。

予防・対策法②魚介類に寄生したアニサキスを除去する

新鮮な魚介類を選び内臓を素早く取り除く、「生食用」や「刺身用」と食品表示されたものを選ぶ、アニサキスを目視で確認し、見つけたら除去するといった対策が取れます。

ただし、目視で除去する方法は十分とは言えない可能性があります。

予防・対策法③魚介類に寄生したアニサキスを死滅させる

魚介類に寄生したアニサキスは、加熱処理または冷凍処理を適切に行うことで死滅させることができます。
加熱処理と冷凍処理のポイントは次のとおりです。

  • 加熱処理:中心温度70℃以上、60℃で1分以上(しっかり火を通すこと)
  • 冷凍処理:中心温度マイナス20℃で24時間以上(しっかり凍らせること)

ただし、冷凍処理をするときは、冷凍室温度を確認する(一般的な家庭用冷蔵庫の冷凍室はマイナス18℃が基準)ことが重要です。

アニサキス対策の注意点

塩、醤油、ワサビ、食酢などの調味料でアニサキスが死滅することはありません。

また、アニサキスを「よく噛めば大丈夫」というのは間違いです。

アニサキスとは魚介類に寄生する線虫で食中毒の原因物質

アニサキスは海洋の哺乳類や魚介類などに寄生する線虫の一種。
人間が食べる魚介類にも寄生していて、食中毒の原因になることがあります。

アニサキスが原因の食中毒はアニサキス症といい、生きたアニサキスの幼虫が人間の胃腸壁などの粘膜を突き刺すことで発症します。

治療は、体内のアニサキスを確認して除去する方法。
アニサキスに有効な駆虫薬がないため、内視鏡検査時に見つけて摘出するか、見つからない場合は部位ごとの対症療法となります。

アニサキスによる食中毒を予防し、魚介類を安全に調理したり食べたりするには、①魚介類の生食を避ける、②魚介類に寄生したアニサキスを除去する、③魚介類に寄生したアニサキスを死滅させるといった対策が有効です。

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