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ニセコや札幌のデータから資源の価値を読み解く――北海道科学大学で「社会調査法」公開講座を開催しました

2026年6月12日(金)、北海道科学大学でデータから地域社会の未来を学問的にひもとく公開講座「データでみる都市の"みどり"と経済」が開催されました。

講演会の様子1

データでみる都市の"みどり"と経済

未来デザイン学部人間社会学科1年生の授業「社会調査法」(担当:道尾淳子准教授)に、今年度、未来デザイン学部人間社会学科に着任された経済学専門の板谷淳一教授がゲスト登壇しました。履修生60名に、本学教職員・一般市民も交え、データを通して地域資源の価値を考える90分間となりました。

世界のニュースから地元・北海道へ:データで測る「地域資源」の価値

講演会の様子4

板谷先生はまず、誰もが使える「オープンデータ」の可能性を解説しました。導入として、先生自身が現地で撮影した写真や旅行記を交えながら、富士山やエジプト、マチュピチュといった世界的な観光地での混雑や環境負荷のニュースが紹介されました。

これらは、学生にとっても耳馴染みのある「オーバーツーリズム観光公害)」の事例です。

これらを踏まえ、経済学の重要な概念「共有財産の悲劇コモンズの悲劇)」が説明されました。所有権が確定していない自然環境などの共有資源を、全員が個人の合理性で自由に使いすぎると資源が破壊され、最終的に全員が不利益を被る構造のことです。

この「悲劇」を防ぐには、自然や環境という目に見えない資源の価値をデータで正しく分析し、ある集団や組織が使用料を設定したり利用制限して、適切に管理していく視点が不可欠になります。

データの罠:世界的な「ニセコ」の産業構造が見せる課題

北海道の具体的な事例です。世界中から観光客が押し寄せる「ニセコ(ニセコ圏)」について、国の地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」を用いたデータが示されました。

農業や工業が全国的にも健闘している一方、観光業などの「第三次産業」の所得水準は全国1,638位と非常に低いという現実です。

なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか。板谷先生は、原因が「地域資源の所得が地元に還元されていない(地域外への流出)の構造」だと指摘しました。

●    人材・資本の流出:外国人インストラクターや出稼ぎ労働者が多く、賃金が町外へ持ち帰られる。主要ホテルも外資や本州資本が大半。
●    投資・調達の流出:ホテル建設は大都市のゼネコン等が受注し、飲食店の食材も地元産ではなく札幌の中央市場経由が多い。

ニセコは「パウダースノーという一等地(資源)を貸し出しているだけ」に近い状態であり、自然資源が持つ本当の価値を地域内で循環させる受け皿、すなわち地場産業の裾野がないという、産業構造の弱さがデータから浮き彫りになりました。

すでに学んだ「札幌のみどり」と経済の視点が連動する

講義の終盤、司会進行の道尾准教授も交えて、学生たちの身近なフィールドである「札幌・手稲エリア」へ話が接続されました。
実は、「緑豊かなイメージがある札幌市街地の緑被率が、約5.0%と東京23区並みに低い」というデータは、学生たちがこれまでの「社会調査法」の授業ですでに学んでいた内容です。
今回の公開講座の真の狙いは、すでに知っている「みどりのデータ」を、板谷先生の「経済・景観の価値」というマクロな視点と連動させることです。

美しい景観や豊かな自然は、人々の心を癒やす大切な共有財産(外部経済)です。しかし、自然の維持管理の仕組みは、樹木の寿命や職人の技術継承問題などがあり、住民がそれぞれの日常を過ごすだけでは貴重な資源を守ることはできません。「自然資源がもたらす価値を正しくデータ分析し、どう維持していくか」を大学が学問的にアプローチすることの意義が共有されました。

「地域教育」が未来の鍵:受講した学生たちの気づき

授業中の感想コメントでは、ニセコ町出身の学生から「地元をデータという客観的な視点から見る機会はこれまでなかったので、非常に新鮮で面白かった」との声が上がりました。

この「当事者が地元のリアルをデータで客観的に捉え直す」ことこそが、まさにこれからの地域を担う「地域共育・地域創造」の鍵となります。
単に知識を得るだけでなく、自分たちの街にある資源の価値や課題を自発的に学ぶ機会が、どれほど重要であるかを実感する時間となりました。

1年生は現在、自分の歩幅で都市公園など屋外環境を測る「身体尺」によるデータ取得のトレーニングや、独自の調査票作成に取り組んでいます。今回の講座を通じて、学生たちは、データ分析が地域の未来を守るスキルになることを知りました。これから一人ひとりがどのような社会調査を生み出していくのか、今後の成長が期待されます。

講演会の様子2
講演会の様子3