新幹線はなぜ速い?理由を仕組みとともに解説!

科学2023.09.29

この記事について

様々な工夫により高速で日本の主要都市間を結ぶ新幹線ですが、なぜ日本の新幹線は安全かつ300km/h以上の速度で走行が可能なのでしょうか。

そもそもどういった仕組みで走っているのか、なぜ速いのに振動も少なく静かなのか、という点も不思議ですよね。

今回は、新幹線の速さの理由や仕組みについて詳しく解説します!

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 工学部 機械工学科

教授太田 佳樹Ohta Yoshiki機械工学

私は鉄道車両などの機械部品・製品を、より良いものにするための設計技術に関わる研究を進めてきております。
もちろん、より良い製品を製造するには専門的な知識や経験も必要になってきますが、鉄道車両を製造しているメーカーのエンジニアの方と会って話した際にいつも感じることは、我々の足を支えている車輌製造に誇りと熱意を持っている点です。
是非、皆さんも先人のエンジニアの誇りと熱意に触れて、我々の生活を支える新たな仲間の一人になってください。

新幹線はどのくらい速い?

新幹線は電気で走る鉄道ですが、主たる区間を列車が時速200km以上の高速走行ができる幹線鉄道と定義されています。

現在、運行可能な最高運転速度は、リニア中央新幹線を除くと東北・秋田新幹線である「はやぶさ」「こまち」の320km/hです。

この速度は、在来線における一般的な普通列車の最高速度である120〜130km/hを大きく上回っています。

一部の区間では、京成電鉄の特急「スカイライナー」が160km/hで走行していますが、それでも新幹線の速度には遠く及ばず、およそ半分の速度に留まっています。

また、 2027年を目処に開業予定の東京と大阪を結ぶ「リニア中央新幹線」は、なんと最高速度が500km/h以上!
あと数年もすれば、世界で最も速い新幹線が登場します。

新幹線と在来線、同じ線路の上を走行する列車であるにも関わらず、なぜここまで速度に差が生まれるのでしょうか。

次で、その理由について詳しくご説明します。

新幹線はなぜ速い?仕組みを解説!

日本の新幹線が走っている様子

新幹線には、車体や車体以外にも高速走行を可能にするための工夫が施されています。

その速さを保つ工夫は、主に4つ!

順にご紹介していきましょう。

①パワフルなモーターと電圧

車体に施された工夫の1つが、装備されている強力なモーターです。

東北・秋田新幹線の「はやぶさ」「こまち」には、9,600kWもの総出力を持つモーターが搭載されており、最高運転速度である320km/hを可能にしています。

在来線の「スカイライナー」に搭載されている総出力4,200kWのモーターと比較すると、2倍以上の出力であることがわかります。

また、走るために使われる電圧も在来線が2万ボルトに対し、新幹線は2万5,000ボルトと高圧になっていることも、スピードを出せる理由の1つです。

②騒音対策のための車体のデザイン

特徴的な流線型の先頭デザインも、新幹線が早く走れる理由の1つです。

もちろん、先頭の車両は飛行機の先端のような形状をしており、走行中に発生する空気抵抗を可能な限り少なく抑えることができます。しかし、それ以上に大切なのが騒音対策であり、高速でトンネルに突入する際の騒音を抑えてくれております。

先頭車両だけではなく台車部分にも工夫が施されており、車輪が列車の加速に伴って揺れてしまわぬように、そして高速でカーブを曲がるためのアクティブエアサスペンションが使用されています。

③車体の軽量化

車体の軽量化も、速さの秘密です。

車体に使用されている材料や構造、モーターの軽量化や、車軸の中空化、電気回路の刷新などを行うことで、車体本体の軽量化を実現しています。

④線路設備

実は新幹線の車体以外にも、たくさんの速く走るための工夫がされています。

仮に在来線の車体性能を新幹線のように向上させたとしても、同じ最高運転速度に到達できない理由は、線路設備にあります。

高速で走るために、新幹線の線路は一般的な在来線のレール幅が1,067mmに対し1,435mmと広くなっており、走行速度を維持するためにカーブや勾配が緩く作られていて踏切がありません。

さらに、安全に300km/h以上の速度で走行するためには、線路上に障害物が存在しない状態を保つ必要があるため、高架橋や多数の信号を設置することで人や動物が入らないようにしています。


このように、新幹線は車両本体の高性能化だけではなく、適切な線路設備も組み合わせることで高速走行が可能となっています。

ちなみに、先ほどお話しした最高速度が500km/h以上になる「リニア中央新幹線」は、超電導リニアという方式で航空機並の速さを実現します。

地上の推進コイルに電流を流し、車両に付けた強力な磁界を発生させる超電導磁石との間に強力な磁力を発生させ、N極とS極の反発する力・引き合う力を利用することで、このスピードを出すことができる仕組みです。

新幹線はその速さで社会を支える重要な存在!

新幹線が止まっているホームと乗降する人々

新幹線は、その利便性や正確性から、ビジネスだけではなく旅行にも頻繁に利用されており、今や新幹線なしには社会が成り立たないとまで言われています。

2023年6月時点で、日本の新幹線は10路線あります。

  • 北海道新幹線
  • 東北新幹線
  • 秋田新幹線
  • 山形新幹線
  • 東海道新幹線
  • 山陽新幹線
  • 上越新幹線
  • 北陸新幹線
  • 九州新幹線
  • 西九州新幹線

日本の新幹線は世界の国々と比較しても運行している本数が多く、運行時間も正確で、遅延も1分以内に収まることがほとんどです。

また、新幹線の有効活用法として貨物専用車両を走行させることも検討されており、現在、ごく一部で生鮮品の運行も行われています。

車両基地や駅の配置、運行時間の設定など、現状では課題も多くありますが、実現することで輸送の高速化が進み、より社会にとって重要な役割を持つ可能性があります。

「新幹線はなぜ速いのか」知識を得ることで乗車がより楽しめる!

現在、運行可能な新幹線の最高運転速度は、東北・秋田新幹線である「はやぶさ」「こまち」の320km/hで、「リニア中央新幹線」が開業すると、なんと最高速度は500km/h以上になります。

これは日本だけでなく、世界においても1番を誇る速さです。

新幹線の速さの理由には、装備されている強力なモーター、2万5,000ボルトもの高圧な電圧、空気抵抗を可能な限り少なく抑える車体のデザイン、そして軽量化していることが挙げられます。

また、レールとレールの間が広くなっていたり、走行速度を維持するためにカーブや勾配が緩く作られていたりと、新幹線用の線路設備にも速さの秘密が隠されています。

速く走る仕組みについてご紹介してきましたが、

現在、貨物専用の新幹線も2023年を目処に導入を検討しており、ますます今後の日本になくてはならない存在となっていくでしょう。

「高速鉄道の軽量化について」がわかる講座を行っています

北海道科学大学機械工学科の太田 佳樹教授が、今回と同じテーマである「高速鉄道の秘密」という講座を行っています。

さらに深掘りした高速鉄道の秘密を探れるので、高速鉄道の構造や車両軽量化について興味のある方は、きっと楽しいはず!
ご参加お待ちしています。

北海道科学大学では、教員を派遣して授業を行う出前授業も実施中です。
小・中学校や高校の関係者の方でご興味のある方もぜひお問い合わせくださいね。

また、このような乗り物の仕組みなど、私たちの暮らしをより良くするための学問である工学に、興味を持っていただけると嬉しいです。

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