薬の使い過ぎを止めよう

服用する薬剤数が多いことに関連して、何らかの問題が生じている状態を、「ポリファーマシー」と呼びます。薬によって体調が悪くなったり(薬物有害事象、薬物相互作用)、薬の数が多いせいで飲み間違えたり(服薬過誤)、きちんと飲むのをあきらめてしまったり(服薬アドヒアランス低下)、様々な問題が生じます。
ポリファーマシーの原因として、薬の副作用に対して薬が処方される「処方カスケード」、症状が改善しているのに処方が継続してしまう「漫然投与」など、比較的簡単に解消できるものもありますが、高齢者におけるMultimorbidity(多疾患併存)では、各疾患のガイドラインに従って必要性の高い薬が多数処方されるため、個々の病態を評価しなければその解消は難しいとされています。ある患者では中断がうまくいった薬であっても、別の患者では同じ薬を中断すると疾患が悪化する場合があるためです。
病院薬剤師の経験から、患者個別に減薬を試みるには、医師や薬剤師だけでなく、その他のあらゆる医療職種、介護関係者、患者家族、そして何より患者本人の理解と協力が必要だと実感しました。さらに、病院に入院中だけではなく、外来受診、調剤薬局、在宅医療や介護施設など、あらゆる場面の関係者がシームレスに連携を取る必要があります。
私は、特に介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)におけるポリファーマシーに着目し、有効なポリファーマシー対策手法の構築を目指して、研究を行っています。施設訪問や看護・介護職員へのアンケート調査などを通し、現場に即した手法を構築することで、わが国におけるポリファーマシー対策推進に貢献するべく、日々取り組んでいます。
阿部 孝行 助教
- 学位/修士(生命科学)
- 研究分野/医療薬学、薬学教育学
- 研究テーマ/介護保険施設におけるポリファーマシーの実態調査と対策推進方略の構築