寒さに負けない土木構造物を造るために。
冬のはじめにみられる「霜柱」を知らない人はいないでしょう。多くの人は霜柱を踏んで遊んだ記憶があるのではないでしょうか。霜柱は初冬期の風物として皆が知る何気ない現象です。しかし、その現象がとても不思議で私たちの生活と密接に関わってることはあまり知られていません。
そもそも、「霜柱」はどうしてできるのか、これには水・温度・土の3つの要素が関係しています。まず霜柱の基となる水はどこから来るのか。答えは土の中からです。霜柱はまるで植物のように土中から水分を吸い上げて成長していきます。 なぜ霜柱が水を吸い上げるのか、そのメカニズムは未だ分かっていない謎多き現象です。
そんな霜柱も真冬になるとめっきり見かけなくなります。これには温度が関係します。地表に霜柱ができるのは、地表面付近がほぼ0℃であったことを表しています。真冬はさらに温度が下がり、0℃の位置は地中深くに入り込みます。この時、霜柱は地面の下で成長を続けているのです。土の中に霜柱ができると地面は大きく隆起します。その値は、場合によって数10cmにも及びます。このような地盤の凍結による隆起現象を凍上現象と呼びます。凍上現象によって生じる膨張圧は、踏み潰して遊んだ霜柱の印象と異なり、非常に大きな力となります。コンクリート構造物も破壊してしまう程です。特に道路では凍上現象による破壊が多くみられます。
凍上による被害を回避することは技術的に可能です。しかし、構造物の設計には、合理性や経済性が求められます。どこまで凍り、どのくらい凍上するのかを予測して、経済性とのバランスも考えるのは難題です。凍上現象は、現在も多くの研究者や技術者によって扱われるテーマなのです。
川端 伸一郎 教授
- 学位/博士(工学)
- 研究分野/地盤工学、防災工学
- 研究テーマ/地盤の凍上対策に関する研究、設計に用いる気象パラメータの合理的決定法に関する研究、地盤材料の凍上性評価に関する研究