COOPERATION

研究紹介

研究・産学連携

安全かつ有効ながん薬物療法実践のための検討

齋藤 佳敬 教授

 薬剤師業務の柱として臨床・研究・教育の3つが挙げられていますが、その中で臨床業務が最も重要であるのは言うまでもありません。では、なぜ薬剤師が研究をするのでしょうか?研究というと非常に堅苦しく感じる方が多いと思いますが、私は「研究は評価の延長線上にあるもの」と捉えています。評価をすることで自分達の臨床業務や教育制度の正当性を実証したり不足している部分を改善することができ、最終的にはその結果を患者さんに還元することができます。そのため、日頃から「物事をしっかり評価する意識を持つ」ことが質の高い研究を実施する上でとても重要と考えています。また、私は「得られた研究成果が明日からの臨床業務に役立つか」という視点も重要視して研究に取り組んでいます。最先端の研究ももちろん重要と考えていますが、最先端の研究成果を地域の特異性や施設規模の大小を問わず活用するのはなかなか難しいのが現実です。その一方で、昔からよく使用されている薬剤でも副作用のメカニズムやその対処法が十分に検討されていないものが多くあり、患者さんも我々医療者もその対応に苦慮する場面が少なくありません。私の専門分野は腫瘍領域になりますが、このような背景を考慮し、一人でも多くのがん患者さんが抗がん薬をはじめとする薬物療法を楽に進められるよう、実臨床業務を通じてクリニカルクエスチョンを見出し、多くの方々の力を借りながら研究に取り組んでいます。

 研究には様々な手法があると思いますが、私が実施している研究は患者さんの臨床データや薬剤師の業務実績データを用いた臨床研究が主になります。また、臨床研究で得られた結果をより発展させるために基礎的な検証が必要な場合には、実験動物や細胞を用いた基礎研究を他の先生方と協力して実施しています。私の主たる研究テーマは①抗がん薬誘発性の有害事象に対する予防・軽減法の考案、②抗がん薬による有害事象のリスク因子の解析、③(がん治療における)薬剤師業務の評価、になりますが、腫瘍領域以外の疾患領域についても多くの臨床薬剤師の先生方と一緒に研究を進めています。研究を始めてみたい、あるいは学位取得に興味がある先生方とともに研究を遂行することで自らの知見を広め・深めながら成長し、多角的な視点から患者さんのためにできることを全力で考え、そして行動していきたいと強く思っています。

齋藤 佳敬 教授

  • 学位/博士(臨床薬学)
  • 研究分野/臨床腫瘍薬学