PROJECT 02

防災イベントで学ぶ

防災体験プログラム

みんなで防災体験チャレンジ!
@手稲鉄北小学校 体育館

工学部 都市環境学科

根本 健吾さん 山崎 海翔さん
多田 有朔さん

みんなで防災体験チャレンジ!

「知っている」を「できる」にしよう!!

2026年2月20日(金)から21日(土)にかけて、札幌市立手稲鉄北小学校体育館で開催された避難所生活体験イベント。地域学校協働本部「テとテとテつほく」が主催し、小学校の協力のもと、地域団体・行政・大学が連携して実施された。当日は、手稲鉄北小学校の児童とその保護者9組約20名が参加し、実際の避難所生活を想定したプログラムが行われた。

お知らせ記事へ

PROFILE

工学部 都市環境学科 3年(イベント当時)

根本 健吾(ねもと けんご)さん

卒業後は土木・建設業界への就職を志望している。施工管理として現場に立つ将来を見据え、ハード防災だけでなく住民側の備えにも関心を寄せ、自ら参加を決意した。

工学部 都市環境学科 2年(イベント当時)

山崎 海翔(やまざき かいと)さん

硬式野球部に所属。地域防災のワークショップに参加した経験があり、「実際に体験してみたい」という思いから今回のイベントに加わった。現場では誰よりも体を動かし、子どもたちと全力で向き合った。

工学部 都市環境学科 2年(イベント当時)

多田 有朔(ただ ゆうさく)さん

珈琲研究会に所属。地域防災のワークショップでの学びをきっかけに、備えの実際を自分の目で確かめたいという思いを抱いて参加。

#REPORT

真冬の防災体験での学び

避けられない「災害」という課題

地域に根ざし、人とつながり、まちをともに育てていく。地域創造学部が掲げるその想いを実現しようとするとき、避けては通れないテーマがあります。それは、「防災」。北海道でも2018年に胆振東部地震が発生し、全道が停電に見舞われました。大規模な災害は、決して他人事ではありません。しかし、いざ災害が起きたとき、消防や行政がすべての市民に対応できるわけではありません。公助だけに頼るのではなく、いざというときにどう支え合える地域をつくるか。それは「地域づくり」の根本に関わる問いです。
2026年2月、その問いに向き合う一つの実験とも言えるイベントが、札幌市手稲区で行われました。舞台は札幌市にある、手稲鉄北小学校。北海道科学大学の新キャンパス予定地にもほど近いこの場所に、児童とその保護者9組、約20名が集まりました。暖房のない体育館で防災食を食べ、そのまま夜を明かす。地域のNPO、学校、社会福祉協議会、そして北海道科学大学が共催したこのイベントに、3人の学生が運営サポートとして加わりました。

それぞれの動機

3人は学年も志向も異なり、この時点ではほぼ初対面でした。共通の活動経験があるわけでもなく、お互いの人柄もまだわからない状態でのスタートです。3人の中で最も明確な目的意識を持って参加していたのが、イベント当時3年生だった根本さん。志望する土木・建設業界への就職を見据え、施工管理として現場に立つことを目指していました。「防災に関するイベントに携わることで、自分の知識や武器を増やすことが目的」と語ってくれました。
一方、当時2年生だった山崎さんと多田さんは、地域防災ワークショップで災害発生時の地域課題を学んだ経験者でした。山崎さんは「ワークショップだけでは想像しきれなかった部分を、現場で確かめてみたかった」、多田さんは「自分の備えがどれくらい通用するのか、一度試してみたかった」と振り返ります。先生の声かけが直接のきっかけではあったものの、根っこにあったのは「机の上で考えるだけで終わらせたくない」という共通の思い。動機の温度感はそれぞれ違っても、3人とも防災の現場に自分の足で立つことを選びました。

大切なのは「やってみる」こと

このイベントを発案したのは、地域学校協働本部「テとテとテつほく」代表の中安恭平さん。学校と地域をつなぐ活動を担い、防災の専門家ではないからこそ感じてきた違和感が、このイベントの原点にあります。「防災の大切さは、頭ではみんなわかっている。でも、自分たちの備えが冬の避難所で本当に通用するのか、試したことがある人はほとんどいない」。あえて真冬の2月に開催したのも、そこに理由があります。意気込んで用意した寝袋が思ったより寒さに対応できていなかった。防災食を説明書通りに作っても期待ほど美味しくなかった。そんな小さな発見こそが、防災を自分ごとに変えるきっかけになるのです。

また、寒冷地防災の専門家として、この取り組みに関わったのが、北海道科学大学 工学部 都市環境学科の細川和彦准教授です。大学の防災プロジェクト「HUS防災」にも携わっています。イベント冒頭、細川准教授は子どもたちにこう問いかけました。「防災グッズがおうちにある人は?」多くの手が上がります。「では、実際に使ってみたことがある人は?」今度はほとんどの手が下りました。知っていることと、体験の間にある距離。それを縮めることこそが、この訓練のテーマです。「緊急地震速報が鳴って、結果的に大きな揺れが来なかったとき、多くの人は『空振りだった』と言う。でも私は、あれは”素振り”だと考えている。素振りを重ねた人ほど、本番で体が動く」。参加者に語りかけるその言葉に、3人の学生も真剣な表情で耳を傾けていました。

食べて、遊んで気づいたこと

プログラムの一つが、防災食の試食。その準備も学生たちの役割でした。アルファ化米や長期保存パン、レトルト食品を並べ、お湯を沸かし、食事の支度を進めていきます。参加者に配り終えたあと、学生たちもようやく自分たちの分を口にしました。
3人は、実際に自分たちが被災した時のイメージを重ね合わせ、この体験を受け止めていました。「問題なく食べられるね」「普通においしい」そんな反応の中で、「でも味が濃いめだから、毎日続くとキツイかも」という本音もこぼれました。多田さんは、自分自身の備えを率直に振り返ります。「防災食は、存在は知っていても、実際に食べたことはなかった。自分の家にどれだけ備えがあるかも、正直わからない」。頭の中で「知っている」だけだったものが、口に運ぶことで初めて「自分のこと」として立ち上がった瞬間でした。

普段とは違う夜の体育館に、子どもたちは大はしゃぎ。走り回る声があちこちで響きます。山崎さんは、子どもを肩車したり、追いかけっこの相手になったりと、誰よりも体を動かしていました。「最初は何をすればいいか正直わからなくて。でも、子どもたちの方から寄ってきてくれて、一緒に遊んでいるうちに自分も楽しくなった」。一方で、はしゃぐ子どもたちを見ながら、ふと思ったことがあるといいます。「もしこれが本当の災害だったら、この子たちは何日もこういう場所で過ごすことになる。そのとき、ただ一緒に遊んでくれる存在がいるかどうかで、子どもたちの気持ちはきっと全然違う」。社会福祉協議会の竹田さんも、こう語ります。「子どもは我慢のキャパが小さい。保護者も避難生活でメンタルが沈む中、遊び相手になれない時は必ずある。だから子どもの相手ができる大学生は、避難所ではとても心強い存在」。報道等ではなかなか見えてこない、災害現場で大学生が担える役割。山崎さんにとって、それに初めて気がついた夜でした。

学びは教室の外側にも

21時に消灯となり、1日目のプログラムが終了。学生たちの役割も完了しました。根本さんにとって、この一夜は自分が進む仕事の意味を、捉え直す時間になったといいます。「避難所の空気感って、教科書ではなかなか伝わらない。自分は現場に立ちたいと思っているが、その先にいる人たちの顔が思い浮かぶかどうかで、仕事の質はきっと変わるんじゃないかなと。なかなかできない、貴重な経験になった」。将来を見据えた根本さんの言葉には、確かな実感がこもっていました。
山崎さんは「自分にも担える役割があると実感できたのが、一番の収穫。次の機会があれば、また泊まりでも参加したい」と言い、多田さんは「体験を通して、防災を自分ごととして考えられるようになった気がする。帰ったら、自分の家の備えを見直したい」と話しました。
そしてもう一つ、3人に共通していた感想は、「頭で考えていたこととは違った」ということ。避難所の現場に立ち、防災食を口にし、子どもたちと体を動かして、地域の大人の言葉を間近で聞いた。その一つひとつが、教室の外にある学びでした。こうした学びは、地域の人たちが場を開き、大学がそこに加わって、はじめて成立するもの。地域と協働し、実際の地域課題を教材として学ぶ場を用意することも、地域に根ざす大学の役割の一つ。2027年に新設予定の地域創造学部が、まさに担っていく領域です。今回のプログラムも、新学部の存在意義を再確認するような機会となりました。

#VOICES

体験をつくった人たちの視点

北海道科学大学
工学部 都市環境学科

細川 和彦 准教授

専門的な知見を地域に役立てたい

土木やインフラを学ぶ学生にとって、住民側の動きを知ることは欠かせません。使う人の意識や行動を知らなければ、本当に必要とされるものは作れない。今回のイベントが、その想像力を育てる一つの契機になればと思っています。
また、ハード防災とソフト防災、担い手の異なるこの二つをつなぐ役割は、大学だからこそ担えると考えています。専門的な知見を持ちながら、地域に継続的に関わり続けられる――それが大学にしかできないことです。
新キャンパスでは、学生が主体となって地域の防災体験を企画・運営する「防災キャンプ」を構想しています。今回参加した3人のような学生が、次は企画する側に回る。大学と地域がつながり続ける関係を、これからも作っていきたいと思っています。

運営に関わる方々の声

地域学校協働本部「テとテとテつほく」代表

中安 恭平さん

大人を巻き込んだ体験の場を

地域に防災意識を根付かせるには、大人の参加も欠かせません。でも大人だけではなかなか動き出すきっかけがない。そこで子どもたちを中心に、家族や地域の大人も一緒に参加できる場をつくりました。「知っている」を「やってみる」に変えることで、家庭の備えを見直すきっかけになると思っています。今回が初めての試みでしたが、大学が共催に加わってくださったことで専門的な知見も加わり、より有意義な場になったと感じています。

札幌市立手稲鉄北小学校 校長(イベント当時)

小菅 猛雄さん

関わり合うことが地域の安心に

普段なかなか意識の向かない防災について、親子で一緒に考える場ができたことは大きな価値があると感じています。また、子どもたちと大学生が自然に関わり、「北科大のお兄ちゃんだ!」と顔馴染みになっていく。それだけで地域の安心につながっていきます。学校の枠を超えて地域全体で子どもを育てていく、その第一歩になったように感じます。北科大の学生たちは主体的に行動する姿がいつも印象的で、今回もとても頼もしく感じました。

札幌市手稲区社会福祉協議会 事務局次長

竹田 明弘さん

災害現場で学生は重要

災害ボランティアの現場では、必ずと言っていいほど学生の力が欠かせません。情報をすばやく理解し、状況に応じて動ける。その柔軟さは、経験を積んだ大人にもなかなか真似のできないことです。今回のイベントを通じて、学生たちが地域と関わる経験を積んだことは、将来の備えという意味でも心強い。いざというときに顔見知りの学生がいるだけで、避難所の空気は変わります。こうした取り組みが今後も続いていくことを、強く期待しています。

  • 本ページで紹介しているCBLは、既存学科(都市環境学科)で実施した事例です。