PROJECT 01
音更町体験学習プログラム
6日間
道の駅おとふけ「なつぞらのふる里」
未来デザイン学部 人間社会学科
塩口 七海さん 香川 さくらさん
PROFILE
未来デザイン学部 人間社会学科 1年(プログラム当時)
塩口 七海(しおぐち ななみ)さん
愛知県出身。大学進学を機に北海道に移り住む。教員からの薦めで本プログラムに参加。接客業をはじめとした幅広いアルバイト経験を持ち、料理や水泳を得意とする。将来は広告プランナーとして、地域や福祉に関わる情報発信に携わることを目標としている。
未来デザイン学部 人間社会学科 1年(プログラム当時)
香川 さくら(かがわ さくら)さん
北海道出身。同じく教員の推薦を受けて本プログラムに参加。高校時代には弁論大会に出場するなど、人前で自分の考えを伝える経験を積んできた。将来は、地域の現場で調査やヒアリングを行い、その内容を発信したり、企画として社会に伝える仕事に関心を持っている。
#DAY 01-05
音更町がキャンパスになる
体験学習プログラム
地域に飛び込み、学びがはじまる
札幌から車で約3時間。十勝・音更町にある「道の駅おとふけ なつぞらのふる里」を舞台に、地域を教材とした体験学習プログラムが行われました。このプログラムに参加したのは、二人の学生。6日間、道の駅で働き、まちを歩き、人と出会いながら、自分たちなりの提案をまとめていきます。テーマは決まっていません。何を見つけるかは、自分次第。机の上ではなく、地域の現場そのものが学びの場です。不安と期待を胸に、二人はその一歩を踏み出しました。
その日、道の駅おとふけに到着すると、目の前には青い空と畑が。十勝らしい風景の中、今回のプログラムはスタートしました。この道の駅は、十勝を代表する人気の立ち寄りスポット。2027年春に向けて増築計画が進んでおり、道の駅の次のかたちを模索している最中でした。学生たちは6日間を通して、この地で「暮らすように」地域と関わりながら学びを深めていきます。
現場に立って、見えてきたもの
初日はオリエンテーションから始まりました。道の駅の施設を見て回りながら説明を受け、物販の仕事も体験します。そこで出た、塩口さんの何気ない一言は、利用者の視点からの率直な気づきでした。「フードコート、大人向けばっかりだね」「子ども連れてきたら、遊ぶ場所が少ないかも」。
一方で、まちの担当者からはこんな声も聞こえてきます。「冬になるとお客さんがぐっと減るんです」「観光客だけでなく、地元の人が普段使いできる場所にしたくて」。利用者の視点と、運営する側の視点。その両方が少しずつ見えてきました。
課題は「見つける」もの
2日目からは、より実務に近い体験へ。指定管理者の業務、アンケート調査、窓口対応、施設の点検。さらに、増築計画の説明を受けたり、町内の観光スポットを巡ったり。施設業務や自治体の方の業務を通して、この地域への解像度が少しずつ高まっていきます。
しかし同時に、こんな感覚も生まれてきました。「気になるところはある。でも、何から考えればいいんだろう」「まちとして何を目指しているのか、まだ見えない」。知れば知るほど、整理がつかなくなる。そんな中、本プログラムの指導教員である梶谷教授からの言葉がヒントになりました。
「地域の課題は、最初からはっきりしていることのほうが少ない。まずはどこに課題があるのか、その次に、解決するためにはどうすべきか。そんな順番で考えることが大切」。そこから二人は、「答えを見つける」ことよりも、「課題を見つける」ことの大切さに気づき始めました。
「もったいない」から始まった提案
後半、視点が変わるきっかけがありました。道の駅にある「レンタサイクル」の案内表示。しかし実際には、自転車は置かれていません。調べてみると、音更町には、帯広市を起終点に上士幌町から大樹町までを8の字で結ぶ、約400kmのサイクリングルート「トカプチ400」が通っていました。道の駅おとふけも、そのルート上に位置し、立ち寄り拠点の一つとなっています。そんな全国でも限られたナショナルサイクルルートのひとつという魅力的な資源があるにもかかわらず、その活用は十分とは言えないのではないか。二人が抱いたのは、「もったいない」という率直な思いでした。
そこで二人は、音更町職員の方々とともに「十勝バイシクルプロジェクト」の小川宣幸さんを訪ねました。小川さんはカフェを営みながら、トカプチ400の普及にも携わっている方。そんな小川さんとの会話を通して見えてきたのは、自転車を軸とした地域の可能性でした。こうして見えてきた糸口を提案へとまとめ、資料のブラッシュアップを進めていきます。
#DAY 06
町民や行政職員に向けたプレゼン
地域に届いた提案
最終日は、大学が主催して実施したイベント「わがまちトーク」での発表。会場には町長や行政職員、企業、地域団体などが集まりました。音更町の特産物である大豆にちなんだご当地キャラのTシャツに身を包み、心を一つにした二人のプレゼンが展開されていきます。二人がまとめ上げた資料は、「サイクルツーリズム」を核とした、地域おこしの提案でした。道の駅を拠点に、観光客が自転車で地域を巡る仕組みをつくるというもの。
具体的には、初心者向けと中級者向けの二つのコースを設定し、道の駅のシャワールームやレンタサイクルの仕組みを活かす計画。新しい施設をつくるのではなく、すでにある資源を組み合わせて価値を生み出すという視点が、提案の核にありました。会場からは、「若い世代の目線で地域を見てくれたのがうれしい」「サイクルツーリズムは町としても検討したいテーマ」といった前向きな声が寄せられました。短期間の取り組みでしたが、二人の提案は地域にしっかり届いていました。
「実課題を教材にする」学び
発表を終えた二人は、「やりきった」という達成感と、「もっとできたかもしれない」という悔しさの両方を感じていました。発表資料の質も、もっと磨けたかもしれない。地元の人が日常的に使える場所にする視点も、もっと深められたかもしれない。それでも、この6日間で、二人はほとんど知らなかった音更町のことを、自分の肌で深く知ることができました。現場に立ち、人と関わり、自分の目で見たことで実感が生まれ、その実感が提案へとつながり、地域の人たちに届いたのです。
このように、実際の地域の課題に向き合い、「実課題を教材にする」学びは、2027年に新設予定の地域創造学部の大きな特徴の一つ。今回のプログラムは、その学びの入口となる実践となりました。
#VOICES
人との関わりが、プログラムの教材に
北海道科学大学
未来デザイン学部長
梶谷 崇教授
答えのない問いに飛び込む
進捗は確認しながらも、基本的には学生の主体性を大切にし、見守る形で関わりました。
地域の課題は最初からはっきりと示されているものよりも、現場に入って見えてくるもののほうがより深く本質的です。学生たちは短期間ではあるものの、道の駅で働き、まちを歩き、人と出会う中で自分なりに問いを見つけ、それを提案として形にしていきました。その一つひとつの過程に、今回のプログラムの学びがあったと考えています。また、いまの学生は、大人と深く関わる機会が以前より少なくなっています。地域に入り、さまざまな人と関わる経験は、精神的にも社会的にも大きな成長につながるのではないでしょうか。「勉強しにいく」というより「関わりに行く」。そうした姿勢を育む教育が、これからの大学には求められます。学生は一時的な来訪者ではなく、地域の一員として受け入れられる存在になってほしい。今後は1週間だけではなく1か月ほど地域に滞在しながら学ぶ形も理想だと考えています。2027年には、本学に「地域創造学部(仮称)」の新設を予定しており、今回のプログラムはその学びの一端を、実際に地域の中で体験する機会となりました。
地域の方々の声
音更町役場 商工観光担当部長
月居 謙介さん
若い世代の発想を実装に
道の駅は、道路利用者が休憩したり、観光の目的地や地域の拠点として機能するほかに、官民が連携して地方創生・観光を加速する拠点として期待されています。そこには若い世代の柔軟な発想が不可欠だと感じています。
今回の「自転車」に着目した学生提案は、計画段階から取り入れたい内容でした。サイクルツーリズムはまさに私たちが力を入れたいテーマです。ナショナルサイクルルート「トカプチ400」のゲートウェイ施設として、サイクリストや旅先で気軽に自転車を楽しみたい旅行客の皆さんに必要なサービスの提供が求められています。学生たちは、使われていない既存資源に着目し、それを活かす提案をしてくれた。教育と実装がつながる道の駅を目指す私たちにとって、非常に意義深いものでした。
音更町役場 経済部 商工観光課 観光振興係
島田 きららさん
受け入れ側も学び直す機会に
学生を受け入れることで、私たち自身も変わったように感じます。学生に説明するために改めて勉強し直し、日頃なんとなく持っている知識を言語化し直す。その過程で、視点のずれや見落としに気づかされました。
特に印象的だったのは、子ども向けの視点を指摘してくれたことです。私たちはフードコートの机や椅子などについて、乳幼児向けへの意識が強くなりすぎてしまい、もう少し大きい子ども向けの視点が不足していました。地元目線では出ないアイデアが、観光客や町外に住む人の目線から自然に出てくる。それが学生を受け入れる大きなメリットだと感じました。
株式会社オカモト
コミュニティ事業本部 道の駅おとふけ 事務局長
山本 茂貴さん
柔軟な対応が生んだ成果
当初は正直、どんな感じになるんだろうという不安がありました。でも実際に関わってみると、音更に対していろんなアイデアがどんどん出てきて、こちらも刺激を受けました。
二人から「生の声が聞きたい」と要望があった際には、予定になかったんですが、急遽調整して、サイクルカフェの小川さんに会いに行けるようにしました。現場の方の声を直接聞きたいという姿勢は、本当に真剣に取り組んでいる証だと感じました。
受け入れる側としては、柱は用意しつつ、来てみてどうなるかを重視する。学生の特性に合わせて柔軟に対応できたことが、今回の成果につながったと思います。
- ※ 本ページで紹介しているCBLは、既存学科(人間社会学科)で実施した事例です。