CASE03

地域をつなぎ、未来を育てる 北洋銀行が描く 北海道・手稲のこれから

株式会社北洋銀行
手稲中央支店(新手稲支店・手稲あけぼの支店) 支店長

吉津 健太郎さん

北海道の魅力度・幸福度に コミットする銀行へ

私ども北洋銀行は、長期ビジョンとして「北海道の魅力度・幸福度をともに日本一へ」という目標を掲げています。単に金融サービスを提供するだけではなく、北海道に暮らす人々の生活の質や、地域の魅力そのものを高めていきたいという強い思いを持っています。そのためのミッションとして、従業員満足地銀グループNo.1を目指すことで、サービスの質とスピードの向上につなげること。北海道の豊かな自然を守りながら、その利活用を促進し、「北海道らしい成長」をリードすること。北海道のポテンシャル実現のため、全力で経営資源を提供していくこと。そして、資産形成サポートを通じて、道民の皆さまと「幸せ」を共有していくことを掲げています。

こうした思いを具体化するため、さまざまな取り組みを進めています。たとえば、札幌市営地下鉄全49駅へのATM設置や、イオン銀行とのATM相互無料提携、通帳レスATMの利用時間延長などにより、地域の皆さまが「いつでも・どこでも」便利に金融サービスを利用できる環境づくりを進めています。

また、北洋銀行アプリの機能拡充や利用者拡大を通じてデジタル面での利便性向上を図るとともに、法人オーナーやビジネスエグゼクティブの方々向けには、「ほくよう札幌駅前ラウンジ」を開設し、「くつろぎ」と「仕事」を両立できる空間を提供しています。加えて、さっぽろ雪まつりの大雪像制作プロジェクトやスポーツチームへのスポンサーシップなどを通じて、地域の魅力継承や青少年育成・まちづくりにも取り組んでいます。

これからの北海道を考えたときに、必要なもの。それは大きく4つあると考えています。一つ目は、多様で質の高い人財と、その育成・確保の仕組みです。道内企業の人手不足や農業界の担い手不足に対応するためには、量の確保だけでなく、変化の激しい時代に対応できる多様な人財が北海道に集まり、育ち、活躍できる仕組みが不可欠です。当行では、北洋銀行グループに迎え入れたキャリアバンク社による人財派遣・紹介事業や地域みらい留学奨学金による高校生世代の呼び込みに加え、社内では人事制度「ポラリス」を通じて、キャリアアップ・リスキル・自律的活動を促進し、通年採用や専門人財採用の拡大を進めています。こうした取り組みを通じて、北海道全体の人財力を高めることが重要だと考えています。

二つ目は、デジタル・AI等の技術を活用した生産性向上と、生活・金融の利便性向上です。完全デジタル化戦略のもと、北洋銀行アプリの機能充実や利用者拡大、AI教育・研修などを進めていますが、北海道全体としては、まだまだ伸びしろがあります。企業・行政・金融機関が連携し、デジタルやAIを前提とした新しい働き方・サービスを広げていくことが、これからの北海道の競争力向上に不可欠だと考えています。

三つ目は、若者や働き手が「住みたい・働きたい」と思える、魅力あるまちづくりと教育環境です。「ひと・しごと・まち」が好循環を生み出すような、魅力的で持続可能なまちづくりを、金融機関としてもともに担っていく必要があります。

そして四つ目が、次世代を生み・育て・事業を継承していく循環を支える仕組みです。人口・家族・事業承継の循環を再構築することも、北海道にとって重要なテーマだと考えています。こうした観点に立ち、北洋銀行は、資金供給にとどまらず、人財・デジタル・農業・婚活・教育・まちづくりなど、北海道が抱える課題に総合的に向き合う地域のメインプレイヤーとして役割を果たしていきたいと考えています。

「成熟した住宅地」から、 新しい価値を生み出す地域へ

私は手稲区という地域を、「成熟した住宅地」から「人が集まり、新しい価値を生み出す地域」へ変化していると感じています。これまで手稲区は、札幌西部のベッドタウンという印象が強い街でしたが、大学や企業、行政の連携が進み、地域の課題を地域で解決する取り組みが進んでいます。特に近年の変化として、2027年開学予定の北海道科学大学の新キャンパス、新学部を中心とした「知の拠点化」があります。大学による地域に開かれた施設づくりが進められており、学生、企業・行政・住民が行き交う場、そして若い世代が地域に関わることのできるフィールドへ変化していくと見ています。

約13万人を超える人口を抱え、JRの北海道内の駅では札幌駅、新千歳空港に次ぐ3番手〜4番手の乗降客数がある地域で、生活インフラや商業機能も充実しています。また、手稲工業団地などもあり、ものづくりの拠点としても企業活動が活発です。地域金融機関としては、企業向け融資や住宅ローンだけではなく、資産形成や相続、事業承継など、人生全体を支える金融ニーズが今後さらに高まる地域と考えています。

一方で、手稲という地域には、人も企業も魅力もあるのに、それらが十分につながっていないことが課題だと考えています。また、北海道全体を見ても、その課題は共通するものと考えています。まず大きいのが、人手不足・後継者不足です。中小企業では人財確保が最も大きな課題です。特に建設、運送、介護、サービス業では慢性的な人手不足が続いています。また、経営者の高齢化に伴い、事業を続けたいが後継者がいないといった相談も増えています。

もう一つが、若い世代の定着です。北海道科学大学という大きな財産がありながら、卒業後、中心部や道外へ就職する学生も少なくないため、地域との接点づくりや魅力ある雇用、企業の創出が課題だと考えます。

さらに、デジタル化への対応もあります。AIやデジタル技術を活用した業務効率化・生産性向上にはまだ大きなポテンシャルがありますが、一方で、特に中小企業では「何から始めてよいかわからない」との声を聞きます。金融機関として、資金供給だけではなくデジタル化の後押しをすることも、これからの地域課題解決のための役割と考えています。当行でも、AI教育・研修やAIコンサルティング、広告制作支援などを通じて、「AIで企業の生産性向上・課題解決へ」という方針を打ち出しています。

そして、地域資源の活用という課題もあります。手稲山や豊かな自然、農産物、医療機関、大学など多くの魅力がありますが、それぞれが個別に発信されることが多く、手稲ブランドとして一体的に伝えられていない印象があります。人も企業も、大学も、自然もある。それぞれに魅力がありながら、それらをどうつなぎ、地域全体の力にしていくかが、これからの手稲にとって重要だと考えています。

銀行・大学・行政をつなぎ、 地域の課題を地域で解決する

私たち北洋銀行は、手稲区を単なる営業エリアとしてではなく、地域の未来をともにつくるパートナーとして取り組みを進めています。

地域企業に対しては、成長支援や融資だけではなく、創業支援や事業承継、DX・AI活用、販路拡大など、企業が抱える経営課題の解決を伴走型で支援しています。銀行全体・北海道全体でも、地域創生や中小企業支援を重要な役割と位置付けています。

また、手稲区では北海道科学大学と行政が長年連携してまちづくりを進めています。地域に根差す支店としてもそのネットワークを生かし、企業・大学・行政をつなぐ役割を担っていく考えです。若い世代が地域で働き、暮らす魅力を感じられるよう、手稲の小学校や大学への金融リテラシー教育やキャリア講座も実施しています。

北海道科学大学で2027年4月に新設される地域創造学部に対して、「地域を知る人財」ではなく、「地域を変える人財」を育てる学部になることを期待しています。地域課題は、街を歩くことでいろいろなものが見えてきます。銀行の仕事も同じで、決算書だけでは会社の本質はわかりません。工場や店舗に足を運び、経営者の思いを聞き、地域とのつながりを知ることで、本当に必要な取引が見えてきます。学生のみなさんにも、ぜひ現場で学ぶ姿勢を大切にしてほしいと思います。

これからの社会は、知識だけではなく「人を巻き込み、地域を動かす力」が求められます。銀行としても、学生のみなさんには、銀行を「お金を貸す、借りる場所」としてだけではなく、企業・行政・大学・地域をつなぐパートナーとして考えてほしいと思います。

卒業生が「手稲で学んでよかった」「この地域に貢献したい」と感じ、地域の未来を担うリーダーとして活躍してくれることを期待しています。そのために身につけてほしいのは、三つの力です。一つ目は、地域の課題を自分事として捉える力。二つ目は、立場の異なる人をつなぎ、協働を生み出す力。三つ目は、正解のない課題に対し、自ら考え、自ら行動し、最後までやり抜く力です。地域で活躍する人財というと、大きなプロジェクトを動かしている人をイメージしがちですが、もう少し広く、「日々の仕事や暮らしのなかで、周りに良い影響を与え、着実に地域を前に進めている人」を指すと考えています。そうした人財に共通して必要だと感じる力や姿勢はいくつかありますが、根っこにあるものは、それほど特別なものではありません。まずは、相手の話を「聴く力」です。課題や本音をきちんと聴けていなければ、そもそも適切な提案や支援はできません。話す力以上に「聴く力」を意識することが、地域で活躍するうえでの出発点だと思います。そして、地域への関心を持ち、「自分ごと」として捉える姿勢です。自分の仕事や活動が地域全体にどうつながっていくのかを考えること。「誰かの問題」ではなく「自分ごと」として捉えることが大切です。さらに、多様な人と協働する力です。地域の課題は、一つの組織や専門分野だけで解決できるものではありません。立場も価値観も異なる人たちと協力しながら進めていく必要があります。そのとき、意見の違いを「対立」として捉えるのではなく、「より良い解決策を一緒に探すプロセス」として捉えられることが大切です。チームとして成果を出すことを重視できる人、立場の異なる人同士をつなぐ橋渡し役になれる人は、地域の取り組みの中で非常に重宝されています。

最後に、銀行は、お金を預かり貸し出すだけの存在ではなく、地域企業、商店街、学校、自治体など多くのみなさんと日々向き合い、「地域を元気にするためにはどうしたらよいか」を常に考え続けています。そのような日々の対話の中で常に感じるのは、地域の未来をつくるのは、若い皆さんの柔軟な発想と行動力だということです。学生のみなさんには、失敗を恐れず、多くの人と対話し、現場で学んでいただきたいと考えています。地域には、教科書には載っていないような課題や、素晴らしい魅力、可能性がたくさんあると思います。その一つひとつに向き合う経験は、社会に出てから必ずみなさんの力になると思います。銀行としても、みなさんと一緒に地域の未来を考え、新しい価値を生み出していけることを楽しみにしています。手稲から北海道に、そして日本全国へ広がる新しい地域づくりの担い手として期待しています。

profile

吉津 健太郎(よしづ・けんたろう)

2000年入行。室蘭中央支店を皮切りに道内各地の支店で融資・渉外を担当し、札幌東支店、白石本郷支店、函館中央支店では法人営業に長く携わる。栄町支店副支店長、人事部人事企画グループ管理役、春光支店(旭川北支店)支店長を経て現職。

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