CASE02

派手じゃないけど、 やりがいしかない。 まちを支える先輩後輩対談

洞爺湖町役場 総務部 企画財政課

藤岡 孝弘さん 安藤 達哉さん

洞爺湖町について

北海道南西部に位置し、有珠山と湖に囲まれた自然豊かな町。洞爺湖有珠山ジオパーク、北海道・北東北の縄文遺跡群という二つの世界遺産を有し、観光・一次産業・防災を軸に多様な地域資源が広がる。温泉街と旧洞爺村が共存し、暮らしと観光が近い距離にあることが特徴。2025年6月30日(月)に、北海道科学大学と包括連携協定を締結。

地元から出なかった先輩、 札幌から出てきた後輩

安藤

洞爺湖町の職員になったきっかけですが、私は、実は札幌出身で、大学では洞爺湖の水質や外来生物の調査をしていました。学生の頃からフィールドワークや研究で洞爺湖に通っていて、就職したらここに住みたいと思うくらい気に入っていました。卒業後は洞爺エリアの環境施設でガイドとして働きました。仕事自体は楽しかったのですが、将来を考えてキャリアアップを考えたとき、洞爺湖町役場の職員募集を目にしたのがきっかけですね。洞爺湖で暮らしながら働ける仕事を選んできました。

藤岡

私は洞爺湖町の出身ですが、もともとは地元に戻ってくる気は全くなかった(笑)ので、対照的ですね。大学卒業後、ふるさとに恩返しをしたいという想いが芽生え、地元役場の採用試験を受け、公務員の道に進みました。入庁してからは、「自分は本当にこれで良かったのか?」という迷いも20代の頃はありました。30代に入ったあたりから、仕事の全体を俯瞰で見られるようになり、地に足をつけて仕事に向き合えるようになった気がしますね。

安藤

入り口がかなり真逆なので、同じ部署で働いているのは不思議な縁ですね。

藤岡

そうだね。ちなみに私たちが所属する企画調整係は、総務部の中で交通政策や地域通貨、広報、政策立案など、“持続可能なまちづくり”に関わる仕事をしています。外との関わりも多く、関係各所との調整といった仕事が多いかなと。

安藤

地域課題が多い分、どんどん新しい取り組みが必要になっている感じがしますね。

新しい取り組みを 自走させる役割

安藤

洞爺湖町独自の取り組みで言うと、例えば交通の面。昨年、旧洞爺村と温泉街を結ぶバス路線が廃止になりました。人口減少や運転手不足の影響で、採算が取れなくなったためです。このままだとご高齢の方が通院や買い物ができなくなるため、代替として電話やLINEで予約できる乗合タクシー「コネクトタクシー」を導入しました。導入の際は、ご高齢の方に寄り添った説明を心がけ、老人クラブに行ってスマホを一緒に操作したり、地道に普及に取り組みました。最近は高校生が通学に使うケースも増え、「親の送り迎えが減って助かる」と嬉しい声も聞こえています。また現在は、将来を見据えた取り組みとしてライドシェアの実証実験も行っています。実際の利用状況や課題を確認しながら、今後の本格稼働に向けて検討を進めているところです。

藤岡

交通施策は、行政だけでは進められません。商工会や観光協会、飲食店組合などと調整しながら慎重に進めていきました。導入して終わりではなく、生活の中に馴染むまで説明を続けることも重要な仕事だと考えています。

安藤

「とうやコイン」という地域通貨は、経済と生活をつなぐ仕組みとして運用されています。加盟店利用後に公共施設でQRコードを読み取ることでポイントが獲得でき、公共施設への来訪を促しながら、健康増進や地域交流の活性化を目指しています。こうした取り組みを行う中で、商店で「ああ、とうやコインの子だね」と声をかけてもらえることも増えてきました。

藤岡

地域通貨と交通を組み合わせることで、町全体が連動し、暮らしの動きが生まれる。行政の仕組みが単体ではなく、つながっていく面白さがありますね。あとは若手職員が学ぶ機会として、新しい活動も出てきているよね。

安藤

部署を越えて若手が集まり、町の将来を議論する「TSTD(Talks on Sustainable Town Design)」という取り組みがあり、道内の他の自治体へ視察に行くなど、自主的な提案に向けた活動が生まれました。今はまちとして新しいことに挑戦する空気があり、モチベーションになりますね。

目立たないが、欠かせない 縁の下の力持ち的存在

藤岡

やりがいで言うと、僕らがやっていることって、暮らしのごく当たり前の部分だと思っています。水道の蛇口をひねれば水が出るとか、トイレを流せばちゃんと流れるとか、ゴミを出しておけば回収されるとか。住んでいる方からすれば、それは「あるのが普通」で、わざわざ感謝する対象にはならない。そこを支えるのが行政の役目、と思って仕事をしています。ふとした時に「取り組みがスムーズに回ってるな」「利用者がじわじわ増えているな」などを感じられると、手応えがありますね。

安藤

役場の仕事って、机の上だけで完結できるものも多いと思います。でも、現場に行かないと分からないこともたくさんあって。「今日これで病院行けたよ」とか、「朝の送迎が減って助かった」とか、たまに声をかけてもらえると、“この仕事って生活にちゃんとつながってるんだな”って思えます。

藤岡

役場の仕事は、派手さは少ないと思います。その静かさの奥に、ちゃんと支えている感覚がある。暮らしの根っこに関われているというのが誇りかなと思いますね。

「地域」「洞爺湖」 それぞれにある働きがい

安藤

個人的な思いですが、私は札幌にいるときは、大勢の人に紛れて、自分一人がサボっていてもバレないんじゃないか、と感じていました(笑)。でも洞爺湖町に来ると、一人一人が活躍しないといけない。役場の仕事もそうですし、消防団とかにも入って、「必要とされているな」と感じることが増えました。人が少ないからこそ、みんなが何かしらの役割を持たないと回らない。地域で働くやりがいを実感していますね。

藤岡

洞爺湖町について言うと、非常に”学びの素材”が多い町です。洞爺湖有珠山ジオパークと、北海道・北東北の縄文遺跡群という二つの世界遺産を持っている町は、日本全国でもなかなかない。行政の仕事としても、地域の現場としても、面白いテーマが揃っています。ただ正直なところ、その二つの世界遺産を生かしきれていない部分もあります。特に、情報発信やPRがまだまだ足りない。広報やデザイン、企画といった分野は、若い世代がどんどん活躍できると思います。

安藤

地域での学びに興味がある方は、ぜひ一度、町に来てみてほしいです。「なんでまだこんなのがあるの?」「なんでこれがないの?」なども、どんどん言ってほしい。一緒に新しいことをつくれる仲間になってくれたら嬉しいですね。

藤岡

将来の就職先として関心を持ってもらえたら、とても嬉しいです。まずは気軽に足を運んでみてください。

profile

洞爺湖町役場 総務部 企画財政課長

藤岡 孝弘(ふじおか・たかひろ)

洞爺湖町出身。大学卒業後に役場へ入庁し、現在は企画財政課長として交通政策や地域通貨、政策立案を担当。地域の基盤を支える行政の要として奔走している。

洞爺湖町役場 総務部 企画財政課 企画調整係長

安藤 達哉(あんどう・たつや)

札幌市出身。洞爺湖での研究をきっかけに町の魅力に惹かれ、ガイドを経て役場へ入庁。交通政策や地域通貨を担当し、現場を大切にしながら住民と行政の橋渡し役を務めている。

他のインタビューも読む

MORE
INTERVIEWS