身の回りにあるユニバーサルデザイン!バリアフリーとの違いも解説

デザイン2023.10.12

この記事について

多様性社会の実現が求められる現代で、全ての人が快適に生活できる環境づくりの取り組みとして注目されている一つが「ユニバーサルデザイン」の考え方です。
ちょっと意識をすると、生活や社会のさまざまな場所にユニバーサルデザインが取り入れられていることに気付くはず。

今回のコラムでは、ユニバーサルデザインとは何かを解説するとともに、身の回りにあるその具体例な例をご紹介。
ユニバーサルデザインの今後についても一緒に考察してみましょう。

このコラムは、私が監修しました!

北海道科学大学 工学部 建築学科

准教授福田 菜々Fukuda Nana建築学

建築学科の福田菜々です。障がい者や高齢者・子どもたちなどすべての人が快適に生活できる環境づくりに興味があります。これまで、視覚障がい者の方々にご協力頂き、音サインによる経路誘導効果を実験検証したり、高齢者の居場所づくりに関する研究をしたりしています。最近は子どもが生まれたことで、子どもの行動や遊び場空間にも興味が芽生えました。今後も、あらゆる人が安全に安心して楽しめる環境づくりを目指して研究活動を続けたいと思っています。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、文化の違いや障がいの有無などに関わらず、誰にとっても分かりやすく使いやすい設計にすることです。
「デザイン」というと色や形といった見た目のことのように感じますが、目に見えるデザインだけではなく、構造や仕組み、制度設計まで含めた広い意味で使われています。

英語表記「universal design」の頭文字を取って「UD」と記されることもあります。

ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインの基本である「全ての人にとって使いやすい」を実現するために、まとめられた7原則をご紹介します。

1. 誰にでも公平に利用できること
誰にでも利用できるように作られており、かつ、容易に入手できること

2. 使う上で自由度が高いこと
使う人のさまざまな好みや能力に合うように作られていること

3. 使い方が簡単ですぐわかること
使う人の経験や知識、言語能力、集中力に関係なく、使い方がわかりやすく作られていること

4. 必要な情報がすぐに理解できること
使用状況や、使う人の視覚、聴覚などの感覚能力に関係なく、必要な情報が効果的に伝わるように作られていること

5. うっかりミスや危険につながらないデザインであること
ついうっかりしたり、意図しない行動が、危険や思わぬ結果につながらないように作られていること

6. 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
効率よく、気持ちよく、疲れないで使えるようにすること

7. アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
どんな体格や、姿勢、移動能力の人にも、アクセスしやすく、操作がしや すいスペースや大きさにすること

※国立研究開発法人 建築研究所「ユニバーサルデザイン7原則」より

バリアフリーとの違い

「バリアフリー」とは、高齢者や障がいのある方が社会生活をする上で障壁(バリア)となるものを取り除く(フリー)という考え方。
足の不自由な方がスムーズに移動できるように手すりやスロープを設置する、車いすの方が段差をのぼるために昇降機を設置するなどが具体例です。

ユニバーサルデザインは、「はじめから全ての人が利用しやすい設計にする」もので、バリアフリーとは異なる考え方です。

身の回りにあるユニバーサルデザインにはどんなものがある?

ユニバーサルデザインは、私たちの身の回りにも実はたくさんあるんですよ!
代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

街中にあるユニバーサルデザイン

街中や公共施設などにもユニバーサルデザインが取り入れられていますよ。

自動ドア

人感センサーなどで開閉する自動ドアは、珍しさを感じないくらい見慣れたものでしょう。
ドアを開ける力が少ない高齢者や子供、車いすユーザーが利用しやすいのはもちろん、両手に荷物を持っている人、子供を抱っこしている人などにとっても便利です。

自動販売機

低い位置に設置した商品選択ボタン、入れやすい受け皿型のコイン投入口、かがまなくても取れる位置にある商品取り出し口など、誰にとっても使いやすい工夫がたくさん盛り込まれています。

ノンステップバス

バスの床面を低くし、乗り降りの際の段差を少なくしたバスです。
高齢者や子供などが乗り降りしやすいのはもちろん、大きなキャリーバッグを引いた人も利用しやすいです。
また、補助スロープを使えば車いすでの乗り降りもスムーズに。

商品に反映されるユニバーサルデザイン

何気なく使っているものにも、ユニバーサルデザインが取り入れられています。

シャンプー・リンスのボトル

シャンプーの容器側面には突起を付け、リンスの容器には付けないことで、触っただけでシャンプーなのかリンスなのかを判別できるようになっています。
視覚障がいの方がわかりやすいのはもちろん、シャンプー中で目を閉じたままでも判断できる優れもの。
メーカーによらず統一されているので、便利ですよ。

文房具

右利き・左利きの両方で使えるハサミやカッター、針のいらないホチキス、安定して正しい位置で握れる鉛筆など、誰にでも同じように使いこなせ、安全で使う人の負担が少なくなる文房具がたくさん登場しています。

ペットボトル

ペットボトルはくびれのある形状にしたり、表面にでこぼこをつけたりして、力の弱い方や手の小さい方でも扱いやすいようにされています。
ボトルの軽量化や、簡単にラベルをはがせる・潰せるようになっているのも、運搬や廃棄・リサイクルの負担を減らす工夫です。

情報を伝えるユニバーサルデザイン

全ての人にわかりやすく情報を伝えるのにもユニバーサルデザインが活躍しています。

ピクトグラム

人や物を単純化したマークで表し、誰もが一目で分かるデザインです。
文字の読めない子供や細かい文字を読みにくい高齢者、外国からの旅行者など、文字が分からない人にも情報を伝えることができます。
2020年東京オリンピック・パラリンピックでも話題になりました。

信号機

信号が青になったことを音楽や擬音で伝える音響式信号機。
視覚障がいがある人にとっては、音が鳴ることで進む方向が分かりやすいという利点もあります。

ユニバーサルデザインは今後どうなる?

ユニバーサルデザインの目的は、全ての人が安全に、そして快適に暮らすこと。
さまざまなニーズに応えるためにも、ユニバーサルデザインの需要は増え、取り入れていく企業や自治体も増えていくでしょう。

また、ユニバーサルデザインは全ての人が活躍できる社会を作るためにも重要です。
ユニバーサルデザインの考え方を積極的に取り入れて、年齢や性別、国籍、障がいなどに関わらず、お互いを尊重し、支え合う社会を実現していきましょう。

ユニバーサルデザインは身の回りにたくさんある!

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障がいの有無などに関わらず、全ての人にとって分かりやすく使いやすいデザイン・設計・仕組みのことです。
自動ドアや段差を減らしたバス、両利き用のハサミなど、すでに生活の中にもユニバーサルデザインがたくさん取り入れられていますよ。
ピクトグラムは2020年東京オリンピック・パラリンピックでも話題になりましたね。

ユニバーサルデザインは誰もが使いやすい商品・サービス・制度を作ることで、誰もが自分らしく活動できる社会を目指しています。

北海道科学大学工学部建築学科の福田 菜々准教授が本記事と同じテーマの「ユニバーサルデザインについて」講座を行なっています。

「健常者のみならず、障がい者や子供、高齢者にとっても使 いやすいデザインについて解説します。」

高等学校をはじめ中学校・小学校の関係者の方でご興味のある方はぜひ下記からお問い合わせください。
北海道科学大学出前授業ページ

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